2016.4.18 恐ろしいプロの殺し屋 【シャドウゲーム】
シャドウゲーム [ 大沢在昌 ]
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■ヒトコト感想
殺し屋の伊神と狙われる優実のパートが交互に描かれる本作。伊神が自殺や事故にみせかけ対象者を殺すプロの殺し屋となるまでを描き、優美は事故死した恋人の足跡を追いかける。それぞれが別の目的で動きながら、最終的には伊神と優美が出会うことになる。秀逸なのは、伊神が真の目的は別にありながら優美を追いかけ続け、最終的には伊神の目的が明らかになる部分だ。
優美が持つひとつの楽譜にどのような意味があるのか。伊神の完璧な仕事ぶりと、伊神の魔の手に気づいた優美の動き。巧みな構成により、伊神が真に追いかけたい人物が誰なのか終盤までわからないようになっている。そのため、伊神の不気味さは、すばらしくインパクトがある。
■ストーリー
深夜の首都高で、吉川国夫の車は大型車に引っかけられ炎上。国夫は死亡した。そして、大型車はそのまま行方を晦ました…。国夫の恋人でシンガーソングライターの堀河優美は、彼の遺品の中から一枚の楽譜を発見する。
“SHADOW GAME”と名付けられたその曲は、完成度の高いバラードで、優美は彼の思い出にこの曲の使用を決意した。だが、作曲者は誰なのか…。事故から国夫の足跡を遡り始めた優美は、彼に楽譜を渡した人物もまた、謎の事故死をとげていたことを知る―。一枚の楽譜に秘められた謎とは。
■感想
ターゲットを自殺や事故死にみせかけ殺すことができる男・伊神。まず、この伊神がどのようにしてプロの殺し屋になったかが描かれている。そこから伊神のプロフェッショナルぶりが明らかとなり、次のターゲットとして、優美が選ばれることになる。
優美が選ばれる過程については、それらしきことが描かれてはいるが、巧みな演出により読者をミスリードしている。伊神が優美を追いかける本当の理由は終盤に登場してくる。中盤までは、なぜ伊神が優美を追い続けるのかよくわからないまま物語はすすむ。
優美のパートでは恋人が事故死し、形見となった楽譜のルーツを求めるところから始まる。読者は優美の恋人が事故死したことが、もしかしたら伊神の仕業では?と考えることになる。当然、その流れで物語はすすんでいく。
優美の恋人は、伊神が探し続ける楽譜を持っていたから事故死にみせかけられ伊神に殺されたのか。優実が楽譜のルーツを探る過程で、だんだんと事の真相が明らかになってくる。楽譜にどのような秘密があるのかがわからないだけに、伊神の目的がよりわからなくなる。
伊神の殺し屋としての恐ろしさがこれでもかと描かれている。元ヤクザの野崎に対しても、伊神が邪魔だと判断すると、あっさりと始末する。伊神が相手を脅し、そして、自殺とみせかけるために屋上から飛び降りさせるなど、伊神の恐ろしさばかりが強烈にアピールされている。
死んだ恋人から紐づき、次々と明らかになる真実。優実と伊神にどのような繋がりがあるのか。ラストでは激しい戦いの末、予定調和的に悪は滅びることになる。伊神がすべての真相を明らかにするまでが、面白さのピークだ。
楽譜の秘密として、音楽関係にあると思っていたが、意外な秘密だ。
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