スクランブル 若竹七海


 2015.7.23      女子高生たちの複雑な人間関係 【スクランブル】

                     
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■ヒトコト感想

過去の事件を回想し、現代で真実を暴き出す。舞台は女子高で、文芸部員たちが大きく関わることになる。女子高のシャワールームで部外者が殺されるという奇妙な事件。30代の男性教師が容疑者として浮かび上がるのだが…。女子高生たちの複雑な人間関係がポイントかもしれない。文芸部員なので、本が好きで、それぞれに確固たる信念がある。

現代からの回想として、当時の心境をそこまで赤裸々に語っているわけではないので、物語中で雰囲気を探るしかない。女子高の中での男子教師という立場が微妙であるのと、本人の素養に関わらずそれなりに人気がでることが、容疑者とされる要因となる。ラストでは、現代の場面ですべてが明かされるのだが…。複雑な事件のオチとしてはイマイチ、パンチが弱いような気がした。

■ストーリー

80年代。16歳の冬。女子高のシャワールームで死体が発見された。事件は未解決のまま15年が経ち、文芸部員だった6人の仲間が結婚式で再会。今日、真実は明かされるのか。

■感想
連作短編集であり、最初のシャワールームでの殺人事件が最後まで謎として引っ張る流れだ。その他の短編では小さな事件が勃発し、それを解決するということが繰り返されている。そんな中で、文芸部員たちの人間関係が明らかとなってくる。

やはり女性だけのコミュニティは、男にはわからない何かと込み入った問題があるのだろう。それを一番感じたのは、女性同士の同性愛的な話と、修学旅行でのグループ決めの部分だ。男で同性愛というのと、女性同士の同性愛というのはまた意味合いが違うように思えてしまった。

容疑者として一番に疑われたのは担任の殿村だ。女子高の中に独身の男がいれば、たとえ三十代の冴えない風貌だとしてもそれなりに人気がでるのだろう。殿村が痴情のもつれから女性を殺したというのが、一番しっくりとくるのは確かだ。

作中では殿村犯人説が一番根強いが、最後には間違いだったと語られることになる。女子高生たちの日常の中で、突如発生した殺人事件。そのからくりとしては、やはり日常に根差したトリックとなっている。トリックというよりも、偶然が引き起こした状況というのが正しいのだろう。

現代の場面では結婚式の描写となり、それぞれが思いを語っている。女子高生たちにとっては結婚なんてのは、はるか先の出来事だろう。それが、三十になってみると、身近なことで、結婚するのが当然のようにすら思えてくる。

男であれば、多少の衰えは感じたとしても、まだ三十代は男としてフルパワーで活動できるイメージがある。女性の場合、また印象が違うのだろう。女子高生たちが成長し、お互い中年となり結婚式へ参加する。その場で、すでに時効を迎えた殺人事件の真相が明らかとなる。それは、かなりの爆弾発言だろう。

現実的なトリックというのが良い。



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