死んでも治らない-大道寺圭の事件簿 若竹七海


 2015.2.26      ライトなユーモアミステリー 【死んでも治らない-大道寺圭の事件簿】

                     
若竹七海おすすめランキング


■ヒトコト感想

元警察官が作家となり、様々な事件に巻き込まれていく。警官時代のおバカエピソードをまとめた本として「死んでも治らない」を描いた大道寺圭。そのことがきっかけとして犯罪者たちから付きまとわれ、ヘンテコな事件に遭遇する。ユーモアミステリーといった感じか。連作短編集なのだが、短編自体は圭が体験した事件が描かれている。

シチュエーションが短編ごとに異なっていながら、圭が警官を辞めたきっかけの事件は、最後まで少しずつ描かれている。まぬけな泥棒と圭とのやりとりが面白い。圭が凄腕探偵だとか、能力が高いというわけではない。どちらかというと、バカにされている。にもかかわらず、いつの間にか事件は収束している。

■ストーリー

元警察官・大道寺圭は、一冊の本を書いた。警官時代に出会ったおバカな犯罪者たちのエピソードを綴ったもので、題して『死んでも治らない』。それが呼び水になり、さらなるまぬけな犯罪者たちからつきまとわれて…。大道寺は数々の珍事件・怪事件に巻き込まれてゆく。ブラックな笑いとほろ苦い後味。深い余韻を残す、コージー・ハードボイルドの逸品。

■感想
元警官で、今は作家の大道寺圭。基本的にユーモアミステリーなので、圭と犯罪者たちの会話はユーモアにあふれている。「猿には向かない職業」にしても、圭の元に入った依頼から、事件解決までの過程が非常に駆け足だ。

複雑な事件で、シリアスな結末であるにも関わらずライトな印象を受けるのは、圭と登場人物たちの会話にあるのだろう。キャラクターのあだ名がお猿のジョージだったり、うさぎのマックスだったりと普通ではない。雰囲気で面白さを作りあげている。

「殺しても死なない」は、圭が完全犯罪ミステリー小説を添削することから始まる。完全犯罪と言いながら穴だらけの小説を読みアドバイスを送る圭。現実に同じ事件が起きたとき…。よくあるパターンかと思いきや、さらに上を行く展開だ。

完全犯罪とうたった小説でありながら、誰が読んでも完全犯罪ではない物語だ。圭の指摘はもっともで、小説の中の出来事がそのまま現実で起きるとどうなるのかが描かれている。ラストも、圭が提案した完全犯罪の方法で圭自身が殺されたかと思いきや…。オチが良い。

大道寺圭のキャラクターの面白さと、まぬけな犯罪者たちのエピソードが面白い。そして、そのエピソードに絡むちょっとした事件に圭が遭遇していく。圭が警官を辞めた事件が、それぞれの短編の合間に挟まれている。そのため、警官時代の事件がその後の短編に影響しているのかと思いきや、そうではない。

オマケ的な要素なのだろう。他の短編のユーモラスな雰囲気に比べると、硬派なミステリーだ。バラエティに富んだシチュエーションと、圭と犯罪者たちのユーモアあふれる掛け合いがメインなのだろう。

ユーモアミステリー短編集だ。



おしらせ

感想は下記メールアドレスへ
(*を@に変換)
pakusaou*yahoo.co.jp