世界史の極意 佐藤優


 2016.8.14      勉強するという感覚なしに楽しめる 【世界史の極意】

                     
世界史の極意 [ 佐藤優 ]
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■ヒトコト感想
世界史といっても歴史を勉強するというたぐいではない。過去の歴史の鍵となる部分を学び、現在起こっていることを検証する。印象的なのは帝国主義の記載部分だ。学生時代に軽く勉強した程度の知識しかないので、帝国主義とはどのようにして作り上げられ崩壊したのかは非常に興味深い。それでいて、新・帝国主義として現代へと繋がる。

この強烈なインパクトはすさまじい。帝国主義が最終的には戦争に向かっていったことを考えると、新帝国主義はどのような末路をたどるのか。キリスト教とイスラムなどは、ほとんど知識がなく新鮮な気持ちで読むことができた。今、世界で起きていることを紐解くには、過去を学ぶことが一番なのかもしれない。

■ストーリー

ウクライナ危機、イスラム国、スコットランド問題…世界はどこに向かうのか?戦争の時代は繰り返されるのか?「資本主義と帝国主義」「ナショナリズム」「キリスト教とイスラム」の3つのテーマを立て、現在の
世界を読み解くうえで必須の歴史的出来事を厳選、明快に解説!激動の国際情勢を見通すための世界史のレッスン。

■感想
「資本主義と帝国主義」の章は非常に勉強になった。というか、もともとこのあたりの知識が不足していたので、世界がどのようにして帝国主義へと移り変わっていったのかが非常にわかりやすく描かれている。共産主義がすたれた理由や、現代の新・帝国主義の時代はどうなっていくのか。

過去を紐解いてみると、現代の新・帝国主義も戦争に向かっているように思えてしまう。歴史はくりかえすというが、作者の説得力のある理論を読まされていると、そうなるように思えてくる。

「ナショナリズム」は民族のことにも言及している。普段あまり意識しない部分であることは間違いない。ただ、国によってはナショナリズムを煽り仮想敵国を作ることで国内の不満を打ち消している国がある。どのようにしてナショナリズムが作り上げられるのか。

民族の部分は歴史と非常に重要な関係がある。学生時代に勉強した世界史とは切り口が異なっており、わかりやすくまとめられている。細かな固有名詞を覚えることに苦心した学生時代とは違った視点で読むことができた。

「キリスト教とイスラム」は、イスラム教のスンニ派やシーア派の違いなど、世界史の教科書には細かくのっていない部分が解説されている。イスラム原理主義者たちがなにを目指しているのか。そのためにどのようなことをしようとしているのか。

歴史を紐解くことで、未来すら予想できると作者は語る。世界史に不慣れな人も、今現在起こっていることと関連付けされると理解しやすいだろう。その出来事が起きた理由と、現代に関連する流れは非常にわかりやすい。

世界史を勉強する、という感覚ではなくとも理解できる良作だ。



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