サラバ! 下 


 2017.7.16      とてつもなく難易度の高い人生 【サラバ! 下】

                     
サラバ!(下) [ 西加奈子 ]
評価:3
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■ヒトコト感想
上巻では、破天荒な姉とそれに翻弄される弟・歩の目線で描かれていた。下巻では大学生となり自由奔放な歩が、頭がハゲだすという異変により人生が大きく変わっていく様が描かれている。大学生の歩が、サブカルのライターとして独り立ちし、そこから売れっ子ライターとなる。さらには、女にもモテ、自由な大学生活を謳歌する。

歩は映画サークルでビッチな女と出会ったりと、状況の変化はあるのだが、それでも綺麗な彼女と幸せな生活を送っている。それをぶち壊すのは、お決まりどおり破天荒な姉の存在だ。巻貝のハリボテに入り込む姉。それを知られないようにする弟。歩がハゲだしてからの人生の逆転は、ある意味非常に面白い展開だ。

■ストーリー
父の出家。母の再婚。サトラコヲモンサマ解体後、世間の耳目を集めてしまった姉の問題行動。大人になった歩にも、異変は起こり続けた。甘え、嫉妬、狡猾さと自己愛の檻に囚われていた彼は、心のなかで叫んだ。お前は、いったい、誰なんだ。

■感想
姉の存在と父親と母親の離婚原因。上巻からの謎はこのふたつだ。順調かと思われた歩の人生が、少しずつ狂い始める。最初は姉の存在であったが、そこから自分がハゲだすことが大きな影響を与える。

幼いころには見た目に影響されるような存在ではなかった歩が、少しモテだすと、ハゲたことによってモテなくなることがコンプレックスとなる。この転落具合が非常に面白い。それまで明らかに下に見ていた姉が、海外で白人と結婚し日本に帰国する。この時が歩の劣等感のピークだろう。

それまで散々姉に迷惑をかけられてきた歩が、逆に姉から心配される。となると、歩が怒り狂うのは当然だろう。それまでの立場がまるっきり逆転したような形となる。物語の展開として、まさに想像外のパターンとなっている。

父親と母親の離婚原因についてもはっきりと語られるが、非常にディープだ。父親が出家した理由についても、納得できる展開となっている。歩の周りの家族の破天荒な状況はかなり強烈だ。歩でなくても、まともな神経ではやっていけないような状況かもしれない。

ラストへ向かって歩の状況は改善する。それまでの不安定な心理状況から次第に変化していくのは、姉の言葉が大きい。それまで毛嫌いしてきた姉に、理解ある言葉を投げかけられ、素直に受け入れることができたのは、父親と母親の状況が理解できたからだろう。

エジプトでの生活や、破天荒な姉の存在。非常に人生としての難易度は高い状態でありながら、しっかりと地に足をついた結末となる。なんだか、それまでの変化に富んだ物語から、しっかりとした自己啓発本のようにすら感じてしまう。

とんでもなく難易度の高い人生であることは間違いない。



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