サラバ! 上 


 2017.7.8      破天荒すぎる家族 【サラバ! 上】

                     
サラバ!(上) [ 西加奈子 ]
評価:3
西加奈子おすすめランキング
■ヒトコト感想
イランで生まれた変わり者の姉をもつ弟が主人公の本作。幼少期から大学生になるまでが上巻として描かれている。非常に盛りだくさんの内容で、ひとことで表現するのは難しいが、変わった家族の物語というべきだろう。特に、人と同じことを何より拒否する姉と、母親の険悪な雰囲気は、母娘とは思えないほど強烈なインパクトがある。

母親の作る食事を拒否しガリガリに痩せ、「ご神木」というあだ名を付けられる。エジプトに移住してからの破天荒な生活や、その後、日本に帰ってきてからの安定した生活など、普通ではない人生を過ごしている。勉強については何一つ語られていないのだが、すさまじい家族に囲まれて生活している。

■ストーリー
1977年5月、圷歩は、イランで生まれた。父の海外赴任先だ。チャーミングな母、変わり者の姉も一緒だった。イラン革命のあと、しばらく大阪に住んだ彼は小学生になり、今度はエジプトへ向かう。後の人生に大きな影響を与える、ある出来事が待ち受けている事も知らずに―。

■感想
破天荒な姉の弟として生きる歩。エジプトでの生活や日本に戻ってきてからの生活は、歩自身には何の問題もない。ただ、姉の強烈な生活が歩の日常に影響を与える。歩が気づいた時から、姉と母親の仲は悪い。普通に考えると母親と娘は同性であるだけに姉妹のように仲良くなるような気もするが…。

母親は娘の事が理解できず、娘は母親を拒否し続け、母親が作る食事に手を付けようとしない。そのためガリガリに痩せ、クラスメイトからは「ご神木」というあだ名をつけられイジメに合うことになる。

エジプトでは束の間、平和な日常が過ごせていた。それが父親と母親のいさかいにより、最終的にはふたりは離婚することになる。上巻の段階では離婚原因が何かというのは明らかとならない。エジプトでの奇妙な生活の面白さと、日本に帰ってくる時の平穏の両方が歩視点で描かれている。

非常に波乱万丈な家族だが、その中で唯一まともと思われる歩は、見た目の良さと人当たりの良さで平凡だが充実した日常が過ごせている。なんだかこの家族の中で、歩だけが平凡すぎて異質なようにすら思えてくる。

歩の奔放な大学生生活の中には、さまざまな山や谷がある。ただ、歩の状況というのは強烈だ。読者は歩の日常から目を反らすことができない。エジプトでの生活や、イランでの生活。そして、新興宗教や大震災など、当時をリアルに感じさせるようなイベントと、それに関連した歩たち家族の動向が描かれている。

歩が成長し、ごく普通の日常を過ごせるとは思えない。特殊な状況にある姉がいる限り、何かしら歩に対して影響がでることは間違いない。

下巻では上巻でぼやかされていた真実が明らかになるのだろう。



おしらせ

感想は下記メールアドレスへ
(*を@に変換)
*yahoo.co.jp