作家の収支 森博嗣


 2016.4.3      赤裸々に印税を語る森博嗣 【作家の収支】

                     
作家の収支 [ 森博嗣 ]
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■ヒトコト感想
森博嗣が自身の収入を赤裸々に語る。作家の、それも売れっ子作家の印税や収入がこれほど包み隠すことなく語られたことは今までないだろう。独特な考え方をもつ作者だけに、収入を公開することにもなんら問題はないのだろう。売れっ子作家である作者はトータルすると百万冊以上売り上げている。その結果、どれだけ儲けたのか。

一般人からすればかなり強烈な金額だ。多数の作品を生み出し、継続して売れ続けている作者だからこそ可能なことなのだろう。自分で自分のことをマイナな作家と言い、それでいて、本はかなり売れている。趣味に生きるために、作家としての作業は1日1時間としているのはかなり驚いた。ここまで赤裸々に自分の収入を発表しているのはすごい。

■ストーリー

1996年38歳のとき僕は小説家になった。作家になる前は国立大学の工学部助教授で、月々の手取りは45万円だった。以来19年間に280冊の本を出したが、いまだミリオンセラの経験はなく一番売れたデビュー作『すべてがFになる』でさえ累計78万部だ。

ベストセラ作家と呼ばれたこともあるが、これといった大ヒット作もないから本来ひじょうにマイナな作家である――総発行部数1400万部、総収入15億円。人気作家が印税、原稿料から原作料、その他雑収入まで客観的事実のみを作品ごと赤裸々に明示した、掟破りで驚愕かつ究極の、作家自身による経営学。

■感想
誰もが気になるお金の話。売れっ子作家は果たしてどれだけ儲けているのだろうか。作家の印税はすごいというのは、話として知っていた。具体的にどれだけ売れたからどれだけの印税が入るかというのは、印税率という情報としては知っていた。

それが具体的に金額として提示されるとかなり衝撃を受ける。ただ、かなりの冊数を出版し、連続ドラマ化されたり、映画化されたとしてもこの程度しか売れていないのか、という驚きはある。となると、世間であまり認知されていない作家の収入というのは、どれだけ少ないのか、想像できてしまう。

作者の特徴として、世間体を気にしたり、俗世間にまみれた欲望を満たすために贅沢をするというような選択肢はないようだ。自分の趣味のために金と時間を使う。大学の准教授という仕事を捨て、さらには作家としての仕事量も減らす。

1日1時間しか仕事をしない生活というのはどんなものなのだろう。明確には示していないが、恐らく海外で生活しているのだろう。広大な土地をもち、庭で鉄道を走らせ、それに乗ったりする。なんだか金をもっている世捨て人のような生活に思えてしまう。

合理主義者の作者が、依頼された仕事の報酬により、効率の良い悪いを語っている。自分がやりたくない仕事なので、相場よりも高いギャラを要求する。ものすごく理にかなっている。ただ、世間一般の感覚からすれば、かなり気難しく、付き合いずらい相手と思えてしまうだろう。

他者からどう見られるかということや、世間体は気にしない。誰もができることではない。そもそも、趣味のためにお金が必要になったからと言って、夜できるバイトとして小説を書くという方向にいくことがすごい。

小説を書くことにまったく楽しみを感じていないのも作者の特徴のひとつだ。



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