サイタ×サイタ 森博嗣


 2015.3.12      ストーキングの目的は? 【サイタ×サイタ】

                     
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■ヒトコト感想

連続爆弾魔にストーキング疑惑とXシリーズにしてはめずらしく王道のミステリー風な流れだ。探偵社に持ち込まれた奇妙な依頼から物語は始まる。佐曾利という男の素行調査依頼だ。小川たちが調査していく中で、佐曾利のストーキング疑惑へと発展する。痴情のもつれからのストーキングなのかそれとも…。

爆弾魔とストーキングは別の流れかと思いきや、ある出来事がきっかけとなり、つながりが見えてくる。佐曾利の調査を続ける永田は死体を見つけてしまう。佐曾利の行動がいかにもあやしい。何か裏がありそうな匂いをプンプンさせながら、特に大きなどんでん返しもなく結末へと至る。ひとつ衝撃なのは、佐曾利とストーキングされた女性の関係が意外だったという部分か…。

■ストーリー

「キレイニサイタ」「アカクサイタ」謎めいた犯行声明をマスコミに送りつける連続爆発事件の犯人、通称・チューリップ爆弾魔。その犯行が報道される中、SYアート&リサーチに持ち込まれた奇妙な素行調査。対象者―佐曾利隆夫に以前の同棲相手へのストーキング疑惑が浮上する。張込みに加わったバイトの永田絵里子は、佐曾利を尾行中、爆弾事件に遭遇する。そして第一の殺人事件が!

■感想
Xシリーズに特別な印象はない。たまに冴えた推理を真鍋が展開するくらいかもしれない。今回は通称チューリップ爆弾魔が登場し、連続爆破事件を起す。それと並行するように小川たちに佐曾利という男の素行調査が依頼される。この依頼人がわからないというのがポイントだ。

佐曾利がストーキングしている女・織田が依頼人なのか、それともまったく別の誰かなのか…。佐曾利の奇妙なストーキングが明らかとなっても、何もできない小川たち。探偵社の面々を巻き込んだ、佐曾利に対する大掛かりな張り込みが続くことになる。

佐曾利がストーキングする理由は結局のところはっきりしない。結末にはそれらしいオチはあるのだが、すべては想像するしかない。爆弾魔とストーキング。ストーキングされる方にもなんらかの謎がありそうな雰囲気のまま、物語は進んでいく。

24時間体制での張り込み。相変わらず作者の文体で描くと、24時間の張り込みですらサラリとした無感情の出来事のように思えてしまう。泥臭さや、ハードボイルド的な危うさとは無縁の物語だ。まぁ、現実の張り込みは本作のような感じかもしれない。

ごく普通のミステリー小説として、謎はそこまでミステリアスではない。爆弾魔の目的がイマイチはっきりしないのと、不可解な出来事とは感じないため、ただ、物語が淡々と進んでいくように思えてしまう。連続殺人事件が起きた際も、小川たちの予想が正しいのか正しくないのか、結局のところはっきり明言されていない。

答えをぼやかすことに何か理由があるのだろうか。どうも、消化不良のような気がしてならない。むちゃくちゃなトリックを使われているわけではないが、答えを示されないとモヤモヤとした感情が残る

Xシリーズ全般がモヤモヤ感に満ちている。



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