錆びた太陽 


 2017.12.30      ゾンビから税金をとる 【錆びた太陽】

                     
錆びた太陽 [ 恩田陸 ]
評価:3
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■ヒトコト感想
放射能の事故でそこに住む人々が死にゾンビとなって甦る世界。そんなゾンビがうようよしている制限区域をパトロールするのがウルトラ・エイトと呼ばれるロボットたち。ロボットに守られ制限区域に調査に入るのは、国税庁から派遣された謎の女・徳子。ゾンビのことをマルピーと呼び、マルピーに課税するために調査をする徳子。

この手のSF風な雰囲気は作者の得意分野なのだろう。最初はよく意味がわからないが、しだいに物語に入り込むことができる。青色のタンブルウィードがとてつもなく強力な爆発力をもつだとか、マルピーが人間たちに復讐するだとか、ロボットは人間に逆らえないだとか。SFとしての面白要素は多数つめこまれている。

■ストーリー
立入制限区域のパトロールを担当するロボット「ウルトラ・エイト」たちの居住区に、国税庁から派遣されたという謎の女・財護徳子がやってきた。三日間の予定で、制限区域の実態調査を行うという。だが、彼らには、人間の訪問が事前に知らされていなかった!戸惑いながらも、人間である徳子の司令に従うことにするのだが…。彼女の目的は一体何なのか?

■感想
未来の世界では、事故により放射能汚染が蔓延している。事故で死亡した人間がゾンビとなりマルピーという名前で忌避される。マルピーたちが隔離されているのが制限区域で、そこでは九つの尻尾をもつ巨大なネコの存在や、爆発力のある巨大な青いタンブルウィードなど、まともな世界ではない。

危険極まりない世界で、徳子はマルピーから情報を得ようと無謀な行動にでる。それをいさめ、守るのがウルトラエイトの仕事となる。ロボットと徳子のやりとりが面白い。杓子定規なロボットの中でも、葛藤のような心情が語られるのが良い。

徳子がマルピーから情報を得たい理由は、逼迫する国の財政を再建するため、マルピーから課税しようと考えているためだ。常識的に考えてゾンビから税金をとろうとする神経が疑われる。ただ、マルピーの中には、理性的な知能をもつ者も存在するためそこを突破口としようとしている。

人間の事故によりゾンビ化したマルピーが、人間に復讐することはあれ、人間社会に対して税金を納めるということはありえないだろう。徳子を守るウルトラエイトたちは、冷静に分析しつつも、徳子を守ることに心血を注いでいる。

物語はミステリアスな展開がある。徳子が謎めいた存在であり、その真の目的があいまいなため、ミステリーの要素としてある。マルピーに導かれ行ったビルの中には、巨大な青いタンブルウィードが大量にある。それはテロを疑われるような流れとなる。

マルピーの人間に対する反乱なのか、それとも…。徳子があえて危険をかえりみず制限区域に入る理由はあいまいだが、ラストではきっちりと説明されている。その先には、ウルトラエイトの存在が物語の大きなカギとなっている。

作者らしいSF世界だ。



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