ロスジェネの逆襲 池井戸潤


 2015.6.25      半沢が買収劇をぶち壊す 【ロスジェネの逆襲】

                     
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■ヒトコト感想

半沢直樹シリーズ。前作までと同様に半沢のサラリーマンとは思えないほどの強烈な主張は健在だ。ただ、前2作に比べると、半沢の活躍度は少ない。というか、東京スパイラルと電脳雑技集団との買収対決としての面白さがメインかもしれない。おそらくはライブドアとニッポン放送の買収騒ぎをイメージしているのだろう。

東京中央銀行と半沢が所属する東京セントラル証券との戦いは、謀略や裏取引のすえ、衝撃的な結末を迎えることになる。買収されるか、それとも守り切れるか。ラストはもちろん、今まで圧力をかけてきた東京中央銀行の上役たちに半沢が倍返しをする。相変わらずの爽快感はすばらしい。半沢の活躍度は下がるが、次回へ向けての助走段階のように思えてくる。

■ストーリー

ときは2004年。銀行の系列子会社東京セントラル証券の業績は鳴かず飛ばず。そこにIT企業の雄、電脳雑伎集団社長から、ライバルの東京スパイラルを買収したいと相談を受ける。アドバイザーの座に就けば、巨額の手数料が転がり込んでくるビッグチャンスだ。ところが、そこに親会社である東京中央銀行から理不尽な横槍が入る。責任を問われて窮地に陥った主人公の半沢直樹は、部下の森山雅弘とともに、周囲をアッといわせる秘策に出た―。

■感想
前2作と比べ、半沢の倍返しはおとなしい。山あり谷ありというよりは、ひとつの買収劇を最初から最後まで様々な謀略あり裏切りありで切り抜けていくという感じだ。東京中央銀行と半沢が出向させられた東京セントラル証券。それぞれが電脳雑技集団と東京スパイラルというIT企業のアドバイザーとなり、買収対決を行う。

東京セントラルを買収しようとする電脳雑技集団。明らかにライブドアをイメージするような描き方をしている。買収を防ぐための様々な施策や、時間外取引によるだまし討ちのような謀略。現実の出来事を用いることでリアル感は増している。

買収する側とされる側にはそれぞれ理由がある。そして、アドバイザー側としても、仕事を受けた理由がある。単純に考えると、銀行の子会社である東京セントラル証券が、敵対的買収を防ぐ側にまわってはならないはずだ。

このあたり、半沢の理論がかなり飛躍しているようだが、対立関係を明確にするためにそうしているのだろう。自社の社長をたきつけ銀行と対決する。最終的には半沢の行動は、銀行の利益になるという流れになってはいるが…。普通に考えれば、敵対組織に子会社がいるなんてことはありえない状況だ。

ラストの流れは秀逸だ。半沢がまたもや別の場所に出向させられるのか、それとも…。今までの作品と比べると、相手に倍返しするという勢いは弱い。そう感じるのは、半沢がそこまでしいたげられていないからだろう。理不尽な攻撃や、言いがかりはない。

単純に買収防衛策をまっとうな手段で行った結果ということだ。今回に限り、半沢の相手に対する怒りというのは少し控えめかもしれない。ただ、普通のサラリーマンからしたら、信じられないような、胸がすっきりするような行動の数々は相変わらずだ。

次回作への前フリがしっかりされているのも良い。



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