オレたち花のバブル組 池井戸潤


 2015.3.28      爽快感あふれる大逆転劇 【オレたち花のバブル組】

                     
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■ヒトコト感想

オレたちバブル入行組」をしのぐ面白さがある。半沢が役員たちの不正を暴き出し、近藤はしいたげられた境遇から脱却する。どんなピンチが半沢に襲い掛かってきたとしても、何らかの解決策を見つけ出し、すんでのところで一発逆転する。この振れ幅の大きさが、面白さの要因なのだろう。いくら半沢でも、今回だけは絶体絶命だ。と思わせておきながら秘策を用意しておく。

疎開資料が見つかってしまう、と思わせておきながら、別の対策を練っておく。叩かれれば叩かれるほど、その後はすさまじい倍返しを相手に食らわせる。圧巻なのは、悪は最後に必ず半沢にやられてしまうという、ワンパターンかもしれないが、勧善懲悪が良い。さらには、調子に乗りすぎた半沢に、サラリーマンらしい制裁があるのが、現実的で良い。

■ストーリー

「バブル入社組」世代の苦悩と闘いを鮮やかに描く。巨額損失を出した一族経営の老舗ホテルの再建を押し付けられた、東京中央銀行の半沢直樹。銀行内部の見えざる敵の暗躍、金融庁の「最強のボスキャラ」との対決、出向先での執拗ないじめ。四面楚歌の状況で、絶対に負けられない男達の一発逆転はあるのか。

■感想
今回も半沢は大活躍する。今回の敵キャラは銀行の役員と金融庁の検査官だ。どちらに対しても絶対絶命の状態まで追い込まれるが、そこから仲間の協力を得ながら逆転する半沢。しがないサラリーマンは半沢の活躍にワクワクしながら読むことだろう。

例え自分が正しいと思っていても、普通は上司や周りに啖呵を切ることはできない。自己保身の思いから流れに身を任すというのが普通だろう。圧倒的なテンションで上司や役員に対しても反抗する。この心意気が、平凡なサラリーマンに感情移入させ、気持ちを高ぶらせる要因なのだろう。

半沢だけでなく、近藤の逆転劇もすばらしい。病気で長期療養した近藤が、出向先でしいたげられ、苦しい状況となる。そこから出向先の不正を見つけ、半沢に感化され近藤の復讐劇が始まる。半沢ほどではないにせよ、近藤の逆転劇もすさまじい。

半沢はエリートだが、読者からすると近藤の逆転の方が感情移入しやすいかもしれない。イジメ状態にあった出向先で、年上の部下に対してきつい口調で指示をだす。近藤の状況はわかりやすく、変化があってからの周りの、媚びへつらう描写があからさまなため、より爽快感があるかもしれない。

イケイケの半沢が最後までイケイケでいけるわけではない。役員を告発し、不正を暴き、金融庁をも手玉にとる。正しいことをする半沢が、目立ちすぎたために処分されるのが良い。最後までイケイケで出世街道をひた走る半沢ではリアリティがない。

正しいことをしている半沢が、企業の論理により、不遇な扱いを受ける。逆に近藤は少し流れに身を任せただけで、自分の夢を手に入れる。皮肉なことだが、このピンチを次回作では更なるバネにして、半沢は大きく羽ばたくのだろう。

本作の強烈なカタルシスは、平凡なサラリーマンにはたまらないかもしれない。



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