2016.7.26 絵に描いたような悪徳警官たち 【らんぼう】
らんぼう 新潮文庫/大沢在昌(著者)
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■ヒトコト感想
なんでも暴力で解決しようとする凸凹刑事コンビのウラとイケ。刑事という役柄ではあるが、やっていることはヤクザと変わらない。ただ、相手がチンピラやヤクザというだけで、脅し脅迫暴行なんでもありだ。基本はふたりの暴れっぷりが描かれた短編集だ。検挙率はトップだが被疑者たちから訴えが相次ぐ存在。ヤクザたちを震え上がらせ、チンピラたちに囲まれたとしてもあっという間にふたりで片づけてしまう。
ふたりのハチャメチャ具合はすさまじい。声をかけて返事をしないヤクザには、車をボコボコにし暴行する。相手がヤクザなのをよいことにやりたい放題だ。現実にはありえない刑事たちだが、妙な爽快感があるから不思議だ。
■ストーリー
事件をすべて腕力で解決する凸凹刑事コンビがいた!!身長一八五センチ、体重百キロ、柔道部出身の大浦・通称「ウラ」。小柄だが、空手の達人である赤池・通称「イケ」。ふたりともキレやすく、かっとなるとすぐ手が出て、被疑者をキズ物にして逮捕する。ヤクザにも怖れられ、“最も狂暴なコンビ”と呼ばれ、大活躍!?署内検挙率トップのふたりが巻き起こす、爆笑あり、感涙ありの、痛快・連作ハードボイルド小説。
■感想
巨体で柔道家のウラと小柄だが空手の達人のイケ。ふたりは凶暴な刑事コンビとしてヤクザやチンピラたちを震えがらせている。基本的にふたりがぶちのめすのはヤクザやチンピラばかり。犯人逮捕とは異なったベクトルであっても容赦なく相手をぶちのめす。
さらには、権力を行使し個人的な楽しみも優遇されている。どう考えても悪徳警官であることは間違いない。周りの人間たちからすれば、最も関わり合いたくない存在だろう。人間的に問題ある人物が刑事という最悪のパターンだ。
そんなふたりが主人公の本作は、当たり前のように好き放題やりたい放題だ。上司はもはや諦めており、口を出さなくなっている。相手がどれだけ大人数であってもふたりはまたたくまに相手を倒してしまう。印象的なのは、ふたりが囮捜査員としてコンビニ店員をし、そこへ入り込んだ強盗とのやりとりだ。
チンピラや族たちを簡単にひねり、倍返ししてしまう。下手に権力をもっているだけに、刑事にやられたら相手は何も文句は言えない。まさに極悪非道の限りをやりつくす感じだ。
ふたりはプライベートでも好き放題している。ソープへ行けば割安料金でいい女を回してもらい、店ではツケで飲み食いする。ふたりが刑事なだけに下手に文句は言えない。こんな刑事が存在するわけがないが、荒唐無稽なキャラクターが暴れまわるのはすっきりとした面白さがある。
乱闘になったら決して負けることのないふたり。ヤクザすら恐れるふたり。チンピラやヤクザがビクビクしながらふたりに対応しているのは、なんだか奇妙な面白さがある。
虚構な物語だからこそ、この爽快感が生まれるのだろう。
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