プラスマイナスゼロ 若竹七海


 2015.7.25      女子高生三人の青春物語 【プラスマイナスゼロ】

                     
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■ヒトコト感想

プラスとマイナスとゼロという三人組。ゼロはごくごく平凡な女子高生のミサキ。プラスとマイナスがどちらかわからないが、超お嬢様で不幸に愛されたテンコと貧乏で暴力的なユーリ。この三人が日常に起こる奇妙な事件に巻き込まれるというお話。不可能殺人や、奇想天外なトリックがあるわけではない。日常に起こった謎を偶然の要素に助けられながら解き明かす感じだ。

キャラクターとしてはミサキは平凡なため、主に狂言回し役だ。メインはユーリとテンコが巻き起こすゴタゴタだろう。学生らしい恋愛感情のもつれや、学園でのイベントにまつわる出来事などがある。この三人のキャラクターにより、物語が成立していると言っても良い。三人の個性が平凡であれば、面白さは半減するだろう。

■ストーリー

ある時、センコーがアタシらを見てこう言った―「プラスとマイナスとゼロが歩いてら」。不運に愛される美しいお嬢様・テンコ、義理人情に厚い不良娘のユーリ、“歩く全国平均値”の異名をもつミサキの、超凸凹女子高生トリオが、毎度厄介な事件に巻き込まれ、海辺にあるおだやかな町・葉崎をかき乱す!学園内外で起こる物騒な事件と、三人娘の奇妙な友情をユーモアたっぷりに描いた、学園青春ミステリ。

■感想
女子高生の楽しさというのを極端に表現すると本作のようになるのだろうか。平均的容姿と平均的能力を持つミサキ。不幸を呼び込むお嬢様のテンコ。そして、貧乏で番長的存在のユーリ。この三人が学園内でおりなす物語が短編として描かれている。

三人が遭遇する事件は、日常に沿ったちょっとした事件ばかりだ。陰惨な殺人事件や、解明不可能な密室殺人などは起こらない。激しい恨みや、息がつまるような悪意があるわけではない。作者の作品のイメージからすると、非常にライトで読みやすく、ユーモアの要素が強い作品となっている。

悪意やブラックな部分が皆無なので、その手を求めて作者の作品を読んだ人には不満かもしれない。ただ、底抜けに明るく、前向きな気持ちになれることは確かだ。もしかしたら、女性が読めば自分の学生時代の楽しかった思い出とリンクするような内容かもしれない。

三人それぞれがまったく別の性格にも関わらず仲よくする。三人の出会いのエピソードもあり、キャラ立ちの作品としてはポイントが抑えられている。他人に対する悪意や恨みがない世界なので、ユーリとテンコの経済的格差などみじんも感じさせない関係性が良い。

卒業旅行の短編では、楽しげな学生時代の最後の思い出という感覚が強い。個性的な三人で共通点は何一つないはずだが馬が合う。キャラクターとしては非現実的ではあるが、ユーモアがある。事件が日常的であり、さらには学生たちのちょっとしたユーモアあふれる友情物語というのは、読んでいて心地良い。

作者の他作品の印象とは180度違うと言ってもよいだろう。その代わり、インパクトは弱い。軽い読み心地と、あっさりとした事件のため、どんな事件だったか?と問われると、思い出せない危険性もある。

作者の作品の中では、この軽さは異色だ。



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