ポテチ


 2017.7.20      空き巣が正義の味方風に 【ポテチ】

                     
ポテチ■監督:中村義洋//濱田岳/木村文乃/中林大樹/松岡茉優■
評価:2.5

■ヒトコト感想
伊坂幸太郎の「フィッシュストーリー」の中編を原作とした作品。伊坂作品の映画化は多数されているが、原作の良さを表現するのはなかなか難しい。本作も、原作の感動というか、登場人物たちの小粋な会話を精一杯表現しようとしている。登場キャラクターは非常識なことをしていても、妙な正義感があり、丁寧な口調で話す。

特に黒澤は、伊坂作品には定番のキャラだ。それらを映画としてどううまく表現するのか。実写化されると、なんだか不自然すぎるようにも感じてしまう。ただの空き巣が、実は生まれた時に偶然取り違えられて、その相手がプロ野球選手だった。何より、すべてを見越したような黒澤の存在が本作のすべてだろう。

■ストーリー
同じ生年月日でありながら、対照的な人生を歩む2人の青年―原作は、伊坂13冊目の中短編集『フィッシュストーリー』(新潮文庫刊)のなかの中編『ポテチ』。仙台の街で生まれ育った2人の青年の奇妙な運命を独特の切り口で描いた感動の人間ドラマです。プロ野球のスター選手・尾崎と、空き巣を生業とする凡人・今村、別々の人生を歩んでいるかのように思えた2人は、目に見えない強い力で引き寄せられていった・・・。

■感想
空き巣の今村と、自殺しようとしたところを偶然今村に助けられた若葉のカップル。そして、空き巣仲間の黒澤。プロ野球選手の尾崎。基本的にはこの4人の物語だ。空き巣を生業としている今村だが、妙な正義感がある。

伊坂作品では定番かもしれないが、小粋な会話で犯罪を犯してはいるが、まるでそれが正義のような自信に満ち溢れて空き巣を行う。そこに犯罪者独特の罪悪感は一切ない。そのため、今村の空き巣がまるで通常の職業のように感じてしまう。

今村は尾崎が美人局に騙されようとしていることに気づく。そこで黒澤が暗躍し、いつの間にかすべてをおぜん立てしてしまう。3人の関係性がよくわからない。黒澤はすべてを見越したように、なんでも先に準備している。

若葉は今村の空き巣に対して、何も言わず同棲を続けることになる。今村の母親と仲良くなり、そこで尾崎と今村の関係に気づくことになる。中盤からそれらしい伏線が張られている。なぜか尾崎と今村が引きあうことになる。そして、ラストに向かって爽快な展開となる。

ただの犯罪者であるはずの今村や黒澤が、いつのまにか善人に見えてくる。というか、キャラ設定は完全に正義の味方だ。生まれてすぐ、凡人の今村とプロ野球選手の尾崎は取り違えられた。それに気づいたとしても、若葉の今村に対する態度は変わらない。

プロ野球選手と空き巣という超対極にあるふたり。それぞれの境遇を恨むわけでもなく、また誰かに怒りをぶつけるわけでもない。黒澤がすべてを理解し、尾崎が打席に立てるようにまでしていたことが爽快感のポイントだろう。

伊坂作品を映画化するとこうなるのだろう。



おしらせ

感想は下記メールアドレスへ
(*を@に変換)
pakusaou*yahoo.co.jp