ポリス猫DCの事件簿 若竹七海


 2016.9.6      猫で始まり猫で終わる 【ポリス猫DCの事件簿】

                     

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■ヒトコト感想
葉崎市シリーズ。その中でも猫島を舞台とした作品だ。基本的には臨時派出所に勤務する七瀬巡査が騒動に巻き込まれる物語だ。かたわらには、看板猫ともいえるDCがいる。猫がメインの作品なので、シリアスな雰囲気はない。人が殺されたかと思えば猫だったり、誘拐されたかと思いきや、それも猫だったり。海外からセレブがやってくると思いきや、それも猫だったり。

すべてが猫で始まり猫で終わる作品だ。七瀬が巻き込まれる騒動はしょうもないものから、それなりに危険なものまで様々だ。不発弾を処理するために、周辺にいる猫たちをすべて避難させるという困難なミッションまである。人の悪意を感じる作品ではない。ほのぼのとした作品を読みたい人にはうってつけの作品だ。

■ストーリー

三十人ほどの人間と百匹以上の猫がのん気に暮らす通称「猫島」。島の臨時派出所の巡査・七瀬晃の相棒は、丸顔で目つきの悪いでっかいドラ猫、DCだ。個性的すぎる島民や困った観光客が引き起こす騒動にてんてこまいの毎日。そんな中には、大きな事件も隠されていて…。お気楽だけど真面目な青年警官とポリス猫が、意外な(?)活躍を見せる傑作コージー・ミステリ。

■感想
猫島シリーズ。三十人ほどしか住んでいない場所だけに、そこまで問題は起きるはずがない。が次々と騒動に巻き込まれる七瀬巡査。島に不発弾がみつかり、その爆弾を処理するため周辺住人を避難させる。それだけではおさまらず、周辺の猫までも避難させなければならない。

放し飼いの猫を捕まえて一匹づつ避難させるなんてのは相当な労力だ。猫を重要視する土地柄だけに、そこでの七瀬の行動が島民に対して大きなインパクトとなる。また七瀬は人が良いので、頼まれたことに嫌とはいえない。ほのぼのとした感じがメインの作品だ。

猫島で巻き起こるコージーミステリー。トリックが複雑だとか、先が気になって仕方がないという物語ではない。島に突然あらわれたホームレスと、ホームレスに金をとられたと訴える女。ある程度先は想像できてしまう。ただ、そこに猫と島の住人たちのほのぼのとした考え方が絡むと、心地良い物語となる。

怒りや憎しみ、そして妬みなどない。田舎町ならではの純粋さというか、純朴さのようなものすら感じてしまう。中にはキャラづけとして意地悪な住人も存在するが、それはドラえもんでいうところのスネオのような存在でしかない。

海外からセレブな猫を呼び寄せて広告塔にしようかと思いきや、あてが外れたり。誘拐されたと騒ぎ出す住人たちの話を聞くと、ちょっとした駆け落ち風だが、実は小さな女の子と猫の話だったり。

たくみに構成された展開で、最初の段階では深刻な事件なのでは?と思ってしまう。が、実際には猫が絡んでいるだけに、軽い調子となる。ただ、猫だと軽く扱うと住人たちから大目玉をくらうことになる。なんだか、つくづく七瀬巡査に同情心がわいてくる作品だ。

葉崎市シリーズが好きな人にはうってつけの作品だ。



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