ペット・セマタリー 下 スティーヴン・キング


 2016.12.18      愛息がトラックに轢かれる瞬間 【ペット・セマタリー 下】

                     

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■ヒトコト感想
上巻ではペット霊園の秘密が判明したが、下巻ではいきなり衝撃的な出来事がまっている。ルイスの息子ゲージがトラックに轢かれて死んでしまう。ここから、ゲージをペット霊園に埋葬し生き返らせるかの葛藤が始まる。予想していたことだが、人間を生き返らせるターゲットは誰になるのか。それが最も幼いゲージということで、ルイスたちの苦悩がより強烈に描かれている。

ゲージがトラックに轢かれるその瞬間までスローモーションのように詳細に描写する。ルイスの後悔と葛藤が、ルイスをおかしくし、ペット霊園へと導いてしまう。人には越えてはいけない一線がある。それはどのような理由があれ、越えてはいけない。ある程度想定はしていたが、そこに至るまでの流れは強烈だ。

■ストーリー
猫のチャーチがひょっこり戻ってきた。腐った土のにおいをさせて、森の奥から戻ってきた。ならば、愛する息子ゲージが帰ってきてもいいではないか!愛していればこそ呪われた力まで借りようとする人間の哀しさ。モダン・ホラーの第一人者S・キングが“死”を真っ向から描ききった、恐ろしくも哀切きわまりない“愛”の物語。

■感想
死んだはずの猫のチャーチが戻ってきた。それは腐った土のにおいをあたりにふりまきながらだ。死者を生き返らせる力のあるペット霊園。生き返ったとしても、チャーチのようにまともではいられないかもしれない。ゲージの死を目の前で目撃したルイスの衝撃はすさまじいのだろう。

ルイスが道路に向かって走るゲージの背中をつかむまでが、まるでスローモーションのように描かれる。そして、無事にゲージの背中をつかみ、ゲージがちょっとした怪我をしただけで済んだ未来まで空想してしまう。

最愛の息子が死んだとき、家族はどうなるのか。妻のレーチェルは気がくるったようになり、娘はずっとゲージの写真を肌身離さず持っている。唯一まともな精神を維持していると思われたルイスも、心の奥底で恐ろしい計画を考えている。ルイスの考えを察知したジャドにたしなめられるルイスだが…。

下巻ではすぐにゲージをペット霊園へ埋葬し、生き返ったゲージとの日々の生活の恐ろしさを描くのかと思いきや…。メインはゲージをペット霊園へ入れるまでのルイスの葛藤だ。

激しい葛藤と苦しみの末にゲージをペット霊園へ埋葬するルイス。その後は、ある程度想定した流れとなる。結局のところペット霊園が何なのかはよくわからない。人の心に巣くう嫌な部分を巧みに突いてくる恐ろしい場所。

悪意に満ちた危険な場所と知りつつも、誰もそこから目を反らすことはできない。ジャドからペット霊園の話を聞き、チャーチをペット霊園へ埋葬したことで、すべては決まっていたのだろう。ルイスには避けられない現実ということだ。

予想外にルイスの葛藤が詳細に描かれていた。



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