ペット・セマタリー 上 スティーヴン・キング


 2016.12.2      死者を生き返らすペットの霊園 【ペット・セマタリー 上】

                     

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■ヒトコト感想
田舎暮らしを求めた家族。近所の山奥にはペットのお墓があった。医者として常に死と向き合っている男が、娘や妻の死についての考え方に悩む。小さな子が死を実感するのはどんな時か。ペットの死や近所の高齢者の死が身近に感じる可能性は高いだろう。

本作ではそれらを交えながら死について小さな子供がどう感じるかを描いている。それと共に、近所の山中に人知れず存在するペットのお墓には、大きな秘密がある。ペットを墓に埋めると生き返る。使い古されたネタかもしれないが、生き返ったペットは異様な匂いをふりまき、そして攻撃的になる。近所の高齢な老婆のノーマが死に…。上巻ではまだ明らかとならないが、恐ろしい流れになることは想定できる。

■ストーリー
都会の競争社会を嫌ってメイン州の美しく小さな町に越してきた、若い夫婦と二人の子どもの一家。だが、家の前の道路は大型トラックがわがもの顔に走り抜け、輪禍にあう犬や猫のために〈ペットの共同墓地〉があった。しかも、その奥の山中にはおぞましくも…。

■感想
都会の喧騒を嫌って田舎へと引っ越してきた家族。ごく普通の家庭ではあったが、近所にひっそりと存在するペットの墓が大きなポイントとなる。普通の家庭の中では、小さな女の子が性や死について考えると、親としてはどこまで教えるかの悩みがでてくる。

小さな子が死を意識するのはどんな時か。本作では近所に住む高齢の夫婦のノーマが死に、それを経験した女の子は、死というのをしっかりと意識しだす。それと同時に、家族が飼う猫のチャーチがある日突然死んでしまう。

チャーチの遺体をペットのお墓へと埋めたことで、事態は変化していく。チャーチが生き返り家に帰ってくる。ある程度想定していたが、死者を生き返らせる類の物語だ。ただ、生き返ったはいいが、前とまったく同じとは限らない。

チャーチの場合は、激しく死臭を漂わせながら凶暴な猫へと変化していく。そのことに気づきながらも見て見ぬふりをする男。このパターンでいくと、先はある程度想像できる。死者を生き返らせることができる場所。生き返った者は前と同じではないと知りながら…。

上巻ではまだどのパターンの悲劇かは想像できない。ノーマを生き返らせるのか。それとも家族の中の子供なり誰かが死に、それに苦しんだ男がとんでもないこととわかっていても家族を生き返らせるため、ペットのお墓に死体を埋めるのか。

人の倫理観を問うような作品だ。生き返った者が別人で凶暴になるとわかっていても、微かな希望にすがることと、今の強烈な悲しみから逃れるために禁断の行為に手を染めてしまうのだろう。

下巻がどのパターンの悲劇なのか想像がつかない。



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