2017.7.26 この気持ち悪さが綾辻作品だ 【人間じゃない 綾辻行人未収録作品集】
人間じゃない 綾辻行人未収録作品集[ 綾辻行人 ]
評価:3
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■ヒトコト感想
綾辻行人の未収録作品がおさめられた本作。懐かしの雰囲気を味わうことができる。強烈なのは表題作でもある「人間じゃない」だ。「眼球忌憚」シリーズから続く物語だが、相変わらずの気持ち悪さだ。それ以外にも、作者のファンならば懐かしの雰囲気を楽しむことができるだろう。その他にも、最近の作者の作品としてはありえないほどシンプルなミステリー作品や、読者に謎解きを挑戦させるものなど、多種多様だ。
基本は作者のファン向けという前提があるのだが、ミステリーファンならば間違いなく楽しめるだろう。作品の最初には、作者による作品が出来上がるまでの経緯や、どの作品に紐づけられるかなども語られている。デビューから30年経った作者のオマケ的作品集だ。
■ストーリー
衝撃のデビュー作『十角館の殺人』から30年――。メモリアルイヤーにお贈りする綾辻行人の最新刊!持ち主が悲惨な死を遂げ、今では廃屋同然の別荘<星月荘>。ここを訪れた四人の若者を襲った凄まじい殺人事件の真相は?
――表題作「人間じゃない――B〇四号室の患者――」ほか、『人形館の殺人』の後日譚「赤いマント」、『どんどん橋、落ちた』の番外編「洗礼」など、自作とさまざまにリンクする5編を完全収録。単行本未収録の短編・中編がこの一冊に!
■感想
「赤いマント」は、作者らしくなく?シンプルなミステリーだ。赤いマントの都市伝説があり、ある日、その都市伝説と同じような状況に陥ったのだが、赤いマントは血ではなく赤いペンキだった。都市伝説を利用した自作自演だ。
ただ、なぜそんな自作自演をしなければならなかったのかがポイントだろう。ミステリーとしてありがちなパターンだ。白いドレスを真っ赤に染めて家に帰らなければならない理由は何なのか。いろいろと連想できる中で、それなりに納得できる答えが示されている。
表題作でもある「人間じゃない」は強烈なインパクトがある。「眼球忌憚」で感じた気持ち悪さを思い出してしまった。別荘で若者たちを襲ったすさまじい殺人事件。首や体がねじれたような状態となった死体。事件はなぜ起きたのか。もはや人間ではないような死体。
タイトルの人間じゃないというのがどこに掛かっているのか。人間じゃないものが体の内側にいる、という言葉や、死体が人間じゃないほどむちゃくちゃになっているだとか。この気持ち悪さこそが、初期の綾辻行人の雰囲気であることは間違いない。
「洗礼」は、謎解き挑戦モノだ。作者の実体験のように学生のミステリー研究会で先輩たちに自分が書いたミステリーを披露する。謎解きに関してはミステリーとして十分面白さがある。ただ、作中の先輩たちが全員正解を導き出したのには納得がいかない。
それほどミステリー研究会は、レベルが高いということなのだろう。先輩たちのハイレベルさに驚く作者。そして…。ミステリーファンのマニアックな部分があふれ出ている。本格ミステリファンにとっては懐かしい雰囲気であることは間違いないだろう。
綾辻行人ファンにとっては外せない作品集だ。
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