眠たい奴ら 大沢在昌


 2016.6.25      経済ヤクザが田舎町で暴れまわる 【眠たい奴ら】

                     
眠たい奴ら [ 大沢在昌 ]
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■ヒトコト感想
経済ヤクザが地方の温泉街で利権絡みのゴタゴタに巻き込まれていく物語。主人公の高見が、東京から逃げ込んだ先の街で巨大宗教団体の跡継ぎ問題や温泉街の利権に絡むヤクザや警察たちの争いに積極的に参加することになる。一目ぼれした女のために高見は動き出す。そして、大阪からの謎の刑事の存在が物語を面白くしている。

田舎街で市長や警察署長が絶大な権力をもち、宗教団体も絡むとなると、複雑な利害関係が発生する。それらによそ者の高見が入り込むことで、事態を掻き回している。長大な物語だが、高見のワクワクするような動きにページをめくる手を止めることができない。次々と関係者の血縁関係による繋がりが明らかとると、驚きが止まらない。

■ストーリー

組織に莫大な借金を負わせ、東京から地方の温泉街に逃げ込んだ経済ヤクザ・高見。一方、大阪から単独捜査のため、その街を訪れたはみ出し刑事・月岡。街で二人を待っていたのは、地元の政治家や観光業者をまきこんだ巨大新興宗教団体の跡目争いと、闇にうごめく寄生虫たち―。惚れた女のために、そして巨大な悪に立ち向かうため、奇妙な友情で結ばれた一匹狼たちの闘いが始まる

■感想
最初は単純なヤクザものかと思いきや、そこに宗教団体の跡継ぎ問題や、田舎の温泉街での利権が絡むと非常に複雑になる。町全体ですでに力関係が出来上がっており、どこにつくかで明確な敵味方が出来上がっている。そんな世界に突如として入り込むよそ者の高見。

経済ヤクザとして、惚れた女を守るために動き出す。謎の刑事の存在により、まずは宗教団体の怪しさが語られる。教祖がガンで余命わずかとなり、跡継ぎを狙う怪しい男の存在が明らかとなる。

温泉街の会長の存在や、小さな街の警察署長までが絡んだ事件など、物語は複雑化していく。そんな中であくまでもよそ者として紛れ込む高見。いつの間にか深く関わることになり、西のヤクザから狙われることになる。

このあたりのヤクザのメンツの話や、女関係の話は複雑だが非常に興味深い。さらには、関係者の血縁関係が明らかになるにつれ、事件に新たな道が見えてくる。高見が襲われ絶体絶命のピンチに陥ったとしても、窮地を脱し、さらには相手に何倍も仕返しをする。かなりの爽快感がある物語だ。

宗教団体の幹部や西のヤクザ、そして市長に警察署長。すべてが高見の敵と思われた時、教祖を仲間に引き入れることで大きく流れが変わってくる。さんざん高見のことを追いつめていた者たちが、すべて高見の策略によりドツボにはまりこんでいく。

この流れは最高だ。はぐれヤクザの高見と、大阪からきた孤高の刑事。このコンビが秀逸だ。お互い同じ女を狙っている関係でありながら、相手を蹴落としてまで女の気を引こうとはしない。男らしい面もある部分が良い。

非常に長大な物語だが、ダレることなく楽しめた。



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