猫島ハウスの騒動 若竹七海


 2015.4.25      猫アレルギーの刑事が良い 【猫島ハウスの騒動】

                     
若竹七海おすすめランキング


■ヒトコト感想

猫島というのは、江の島をイメージしたのだろうか。島中に猫がいるのは、まさに江の島だ。猫島で巻き起こる奇妙な事件。最初は崖から落ちた人がマリンバイクに激突する事故と、ナイフが刺さった猫の剥製が見つかったことから始まる。いつもの作者の作品どおり、多数の登場人物たちが事件と関係、無関係にかかわらずいろいろな行動を起こす。

猫アレルギーの刑事が事件を調査する。お気楽な派出所勤務の警官が事件を掻き回し、ゴミ捨て場には何日も放置されたような死体が発見される。ミステリー的な面白さは少ない。複数の登場人物たちが、事件を中心としてそれぞれ動き回るのを楽しむべき作品だ。どこかほのぼのとした雰囲気があるのも確かだ。

■ストーリー

葉崎半島の先、三十人ほどの人間と百匹以上の猫がのんきに暮らす通称・猫島。その海岸で、ナイフが突き刺さった猫のはく製が見つかる。さらに、マリンバイクで海を暴走する男が、崖から降ってきた男と衝突して死ぬという奇妙な事件が!二つの出来事には繋がりが?猫アレルギーの警部補、お気楽な派出所警官、ポリス猫DCらがくんずほぐれつ辿り着いた真相とは。

■感想
猫島で巻き起こる事件。マリンバイクと崖から飛び降りた人の衝突はただの事故で、猫の剥製にナイフが刺されていたのは、ただのいたずらという結論であれば、何も日常は変わらない。そこから、かばん屋の社長や、お土産屋の店員、ナンパ学生や、神社の宮司など、様々な登場人物がかかわってくる。

まず猫アレルギーの刑事が秀逸だ。ガスマスクをつけて捜査をする。すでにこの刑事の存在で、物語全体が少しギャグっぽくなっている。この状態からシリアスな流れにするのは難しいだろう。

お気楽な派出所勤務の警官が、思わぬ働きをする。作者のコージーミステリーでは、必ず一般人が冴えた推理を展開する。今回も複数の人物が探偵さながらに事件を調査する。

オレンジが普通のオレンジではなくブラッドオレンジであることがポイントだったり、薬物取引と金に困る中小企業の社長との関係など、よく考えれば繋がりがわかるようになっている。事件が不可能殺人や密室殺人というわけではないので、犯人は誰か?という部分での引きの強さはない。

猫島で生活する人たちの、どことなくのんびりとした雰囲気が伝わってくる。頭の中では江の島の神社に向かうまでの古めかしいお土産屋や周辺の人々を想像してしまう。人によっては何の山もない、つまらない作品と思うかもしれない。

激しい恨みや憎しみなどは存在しない。動機にしても割とシンプルだ。そのため、後味は良い。明らかなる悪人というのが存在しない。犯人でさえも、どこか同情の余地がありそうな雰囲気がある。

作者のコージーミステリーが好きならば、間違いなくはまることだろう。



おしらせ

感想は下記メールアドレスへ
(*を@に変換)
pakusaou*yahoo.co.jp