泣きむし姫 重松清


 2015.12.4      単身赴任は恐怖でしかない 【泣きむし姫】

                     
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■ヒトコト感想

単身赴任となった夫と、残された二児の母親の物語。少しコメディが入っているが、サラリーマンとして転勤の辛さや残された家族との関係が描かれている。本作をどのような視点で読むかによって評価は大きく分かれるだろう。自分の場合は、単身赴任となる夫の立場で読めた。というか、そうなりかけたことがあるので、身につまされるような気分で読みすすめた。

小さな子供を残して泣き虫な嫁アヤを家に残す。期間限定のシングルマザーとなったアヤ視点での物語がメインとなるのだが、単身赴任した夫の哲也の気持ちも強烈によくわかる。特に、久しぶりに帰ってきたとしても、なかなか家族水入らずで過ごせないなんてのは、悲しくてやるせない状況だ。

■ストーリー

霜田アヤは、二児の母なのに大のなきむし。夫の哲也は、そんな頼りないアヤをいつも守ってくれていた。ところが哲也は一年間の単身赴任となって、アヤは期間限定のシングルマザーに。そこに現れたのは幼なじみの健。バツイチで娘を育てる健は、夫の不在や厄介なママ友に悩むアヤを何かと助けてくれて……。子供と一緒に育つママの奮闘を描く、共感度満点の愛すべきホームコメディ!

■感想
期間限定のシングルマザーとなったアヤ。ご近所のやっかいなママ友の問題や、今はバツイチの幼馴染の健など、複雑な問題がある。ただ、基本はコメディなので、状況を面白おかしく描いている。単身赴任を命じられた哲也が、なかなかアヤにそのことを打ち明けられずにいたり、アヤがすぐに泣いてしまったり。

小さな子供がいる家庭での単身赴任というのは、かなりいろいろと問題があるだろう。残された側もそうだが、単身赴任した男からすると、子供の成長を見ることができないというのは、強烈な悲しみに違いない。

ひとりで子育てに奮闘するアヤに、様々な障害が待ち受ける。それはご近所のトラブルメーカーであるママ友だ。教育問題にうるさく、小学校にも文句を言うモンスターペアレントだ。そんなママ友に翻弄されるアヤたち。このあたり、ママ友だけに邪険にできず、ママ友間でのイジメに対する恐怖もある。

複雑な大人の関係というのを感じずにはいられない流れだ。さらには、心細いアヤの前に、幼馴染の健が登場する。バツイチだが、逞しく頼りがいのある男。なんだか怪しい関係になるのでは?なんていう流れを想像してしまう。

家族を東京に残した哲也にも、単身赴任先で様々な問題にぶち当たる。一番は忙しすぎて東京に帰れないというのがある。一泊二日で帰れたとしても、健たちにイベントを開かれ、家族水入らずで過ごすことができない。家族と過ごす時間が少ないというのは、ものすごく辛いことだろう。

ついつい自分にあてはめて考えてしまった。小さな子供がいる状態での単身赴任の辛さ。ましてや、東京には幼馴染の健がいて、もしかして妻と…。なんてことをモヤモヤと想像してしまう。このあたりが面白おかしく描かれている。

家族のいるサラリーマンであれば、必ず共感できるだろう。



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