娘に語るお父さんの歴史 重松清


 2016.11.11      世代は違うが懐かしさを感じる 【娘に語るお父さんの歴史】

                     

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■ヒトコト感想
15歳の娘から、自分の子供のころのことを聞かれた父親が、自分の育ってきた歴史を振り返る物語。1963年生まれということで、世代が違うため、そこまで共感できる感じではないのだが、懐かしさはある。そして、今と昔の違いを考えると、かなり昔は”普通”であることが強制されていたと分かる。両親と子供二人の家族。

母親が専業主婦で郊外の一戸建てに住むのが普通。国民の9割が自分は中流と考える環境で、普通ではないことがどれだけ疎外感を生むのか。「カギっ子」や「欠損家庭」など、当時は一人っ子でさえ、なんらかの侮蔑的な意味合いがあったのだろう。自分が生まれた時代とは異なるが、今より違った世代ということで、共感できることは間違いない。

■ストーリー
「お父さんの子どもの頃って、どんな時代だったの?」15歳の娘からの問いを機に、父は自分が育ってきた時代の「歴史」を振り返ることに。あの頃、テレビが家庭の中心だった。親たちは「勉強すれば幸せになれる」と信じていた。宇宙や科学に憧れ、明るい未来へ向かって全力疾走していた――。そして、父が出した答えとは。明日へ歩み出す子どもたちへ、切なる願いが込められた希望の物語。

■感想
自分が生まれた頃はどんな時代だったのか。そんなことを娘に問われた父親が、図書館に通い自分の生まれた頃、何が起きてどんな時代だったのかを調べる。1963年なので、自分とは世代が違い、そこまで共感できる部分はない。が、情報として知っていた過去の出来事から状況は想像できた。

印象的なのは、テレビが普及したことで、子供たちの時間の意識が変化したということだ。確かにテレビがなければいつまでも外で遊び、適当な時間に家に帰れば良い。見たいテレビ番組がある場合はそうはいかないだろう。

子供の交通事故が減ったというのもテレビが関係しているという分析は面白い。テレビが普及し、外で遊ぶ子供が減ったから子供の交通事故が減る。確証はないのだが、面白い推測だ。それ以外にも今の時代であれば考えられないほど「普通」に囚われていたというのもわかる。

両親と子供2人の4人家族で専業主婦なのが普通。今ではこの定義は成り立たないが、当時は普通が当たり前で、そこからはみ出ると、特別視されていたらしい。一人っ子だからどうだとか、共働きで子供が鍵を持つカギっ子という言葉がある時点でちょっと差別している。

事の発端は、戦時中に子供だった祖父や祖母と比べれば幸せだったのでは?という娘の問いかけからスタートする本作。確かに戦時中と比べれば幸せかもしれない。そして、今の子供と比べて幸せだと断言できるかというと…。

父親が良いこと、悪いこととして上げたものの中で、公害については衝撃を受けた。国が公害をなかなか認めないがために、その後被害が拡大していった。今現在の子供たちと比べ、今が断然幸せだとは思わないが、不幸だとも思わない。ただ、間違いなく戦時中よりは幸せなのだろう。

自分が生まれるより前の話だが、懐かしさを感じてしまった。



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