2017.3.1 何かに縛られた者たち 【無限人形 新宿鮫4】
評価:3
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■ヒトコト感想
I新宿鮫シリーズ第4弾。安くておしゃれな覚醒剤「アイスキャンディ」をめぐる争いが描かれている。密売ルートを追う鮫島と、薬の独占を狙うインテリヤクザの角。そして、薬の製造元である香川兄弟。それぞれが思惑を持ちながら、相手を出し抜こうと必死になる。ヤクザに弱みを握られた際の恐ろしさと、薬物の恐怖が描かれている。
地方で権力を握る香川家の分家が、本家に対抗するために薬物製造に走る。なぜあえて危険な道を選ぶのか。本作に登場する人物たちは、すべて何かに縛られ行動しているように思えた。警察組織は上司の意向。ヤクザは上に対する上納金。香川家は本家。それらしがらみから抜け出した鮫島だけが自由に暴れまわる。
■ストーリー
手軽でお洒落。若者たちの間で流行っている薬「アイスキャンディ」の正体は覚せい剤だった。密売ルートを追う鮫島は、藤野組の角を炙り出す。さらに麻薬取締官の塔下から、地方財閥・香川家の関わりを知らされる。薬の独占を狙う角、香川昇・進兄弟の野望…。薬の利権を巡る争いは、鮫島の恋人・晶まで巻き込んだ。鮫島は晶を救えるか!?
■感想
若者たちに蔓延している薬物「アイスキャンディ」をめぐる争いが勃発する。鮫島が薬の出所を探す過程で、麻薬取締官との軋轢がある。警察組織と厚生省の管轄という二つの組織の違いにより、考え方の違いが生まれてくる。薬の出所を探るための地道な張り込み。
末端の売り子を逮捕しても意味がない。大もとを逮捕するためには、気の遠くなりそうな道が続いている。売人の逮捕に気を使い、さらには情報統制もしかれ、結果としてどうなるのか…。薬を追い求める鮫島たちのすさまじい執念が描かれている。
新種の薬物の製造元である香川家視点でも物語は描かれている。分家の本家に対する意地。地方で権力を握っていた者の東京への憧れ。そして、切れ者の存在と、ヤクザとの取引。自分たちでアイスキャンディを製造し、ヤクザと取引する。
相手は修羅場を潜り抜けてきたヤクザだけに、弱みを見せないような対応をする。香川家のヤクザたちに対する神経の使い方はすさまじい。自分たちの正体を隠すため、あらゆる手段を用いて目隠しでの取引を続ける。慎重すぎるほど慎重になってもまだ足りないという危機意識を感じる部分だ。
薬物の恐ろしさが描かれている。売る側がいつの間にか薬物におかされ、あげくは幻覚を見ることになる。ちょっとしたほころびから、それを修正しようと別のほころびが大きくなる。インテリヤクザと相対したとしても、相手はヤクザなのでいざとなったら強硬手段にでる。
ヤクザとカタギの心構えの違いは非常に恐ろしい。激しいプレッシャーから薬物に逃げ込もうとする流れがある。鮫島が事件の全容を把握した時には、すでに物語の流れは確定していた。
ヤクザと薬物の強烈な恐ろしさが描かれている。
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