2015.12.23 食事シーンがうまそうだ 【マザーウォーター】
■ヒトコト感想
「かもめ食堂」と同じ流れを組む作品。ゆっくりと流れる時間の中で、食べるシーンや飲むシーンがかなり印象に残っている。ウィスキーを飲むシーンしかり、コーヒーを飲むシーンしかり豆腐を食べるシーンしかり。ただ、最も強く印象に残っているのは、ふらふらと近所を散歩する一人暮らしのおばさんの食生活だ。
バーでウィスキーを飲むのはもちろん、コーヒーや豆腐を食べ、さらには自分で材料を買い、料理をする。その料理が一人分として量は少ないが、酒のつまみとしてはよだれがでそうなほど魅力的な料理だ。うまそうなサンドイッチや、そのほかには丼ものもある。特別なストーリーがあるわけではないので、インパクトはないのだが、腹が減ってくるのは間違いない。
■ストーリー
京都で暮らす3人の女性の姿を綴ったハートフルドラマ。ウイスキーしか置かないバーを営むセツコ、コーヒー店を営むタカコ、水から湧き出たような豆腐を作るハツミの姿を通して、不器用ながらも健気に暮らす人々を綴る。
■感想
京都のごく普通の町で、なんてことない日常が描かれている。特別な主人公がいるわけではなく、皆ごく普通の日常を送っている。その中で、食事シーンが印象的に描かれている。まず、ウィスキーしか置かないバーでは、ウィスキーの水割りとポーナッツを食べのんびり話をする。
このウィスキーがやけにうまそうに感じてしまう。味も素っ気もない平凡なバーで、これで経営がやっていけるのか?と思うようなバーなのだが…。小さな子供までもバーにつれてきて、誰かしらが話できる落ち着いた空間となっている。
コーヒー店を営むタカコと豆腐屋を営むハツミ。それぞれの女性も家族がある描写はない。女性が一人さびしく店を経営する。どちらもそれほど流行る店のようには思えない。唯一家族らしきものが登場するうのが風呂屋の親子なのだが、それ以外はすべての登場人物がひとりでさみしく暮らしているようにすら思えてくる。
ひとりでバーに行き、常連の者たちと楽しげにおしゃべりをする。あまり活動的というよりは、ひっそりと生活しているように見える。ただ、その生活にもすこぶる魅力があるように思えてくる。
強烈なインパクトはないのだが、ゆっくりと流れる時間の中で、他人の子供を皆で仲良くあやす。作中に登場する人々に悪意はいっさいない。田舎町であればもしかしたら存在するのかもしれないが、現代において本作のように近所との関係が密接に繋がり、気軽にご近所さんと話をしたり、子供をあずけたりできる環境というのはない。
資本主義に毒された現在では、金があればあるだけ良いと言う流れがある。必然的に、楽しげな街へと人々は集まってしまう。本作のような生活をずっと続けるのは辛いが、少しだけなら経験したいと思ってしまった。
この雰囲気は古き良き時代を感じてしまう。
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