深泥丘奇談 続々 綾辻行人


 2017.1.7      庭に足の踏み場もないほどの猫が 【深泥丘奇談 続々】

                     

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■ヒトコト感想
京都に住むミステリ作家が奇妙な出来事に遭遇する。このシリーズは主人公の作家を、綾辻行人自身と見立てているのだろう。本格ミステリーの作者が描く奇妙な物語。どことなく京極夏彦の作品に似ている部分もあり、ふざけているのかマジメなのかわからない流れもある。おどろおどろしい雰囲気を作り上げ、それに戸惑う綾辻行人。そして、その状況の答えは…。

インフルエンザの特効薬である「タミフル」をもじった「タマミフル」。前作までの雰囲気から、よりユーモア路線に傾いている。作中に登場する風景描写を頭の中に想像すると恐ろしいのは前作で、今回は、なんだか笑えてくるような場面もある。庭中に足の踏み場がないほど猫が敷き詰められている、というのは笑えてきた。

■ストーリー
もう一つの、ありうべからざる京都”に住まうミステリ作家が遭遇する、奇天烈な怪異の数々。当惑と恐怖、驚愕と忘却の繰り返しのうちに月日は流れ…ついに“世界”は、目眩く終焉を迎える

■感想
「タマミフル」は、タミフルを連想させるような流れだ。奇妙なサルのような子供のようなよくわからい生物を見かけた作者。それが特効薬「タマミフル」の影響によるものなのか?という流れだ。恐ろしいのは、作者の視点で子供がまるで猿のように「ケケケ」と叫ぶ部分だろう。

ただ、考え方によってはなんだか笑いがでてくる。このシリーズは元ネタを知っていないと楽しめないというのがある。前作まではホラー映画を元ネタとしたような作品が多かったが、本作ではバラエティに富んでいる。

「死後の夢」は、夢の中の世界の話となる。タイトルだけ読むと、死んだあとに見るような夢という印象があるが、オチを読むとなんだかずっこけてしまう。同音異義語をうまく使い、恐ろしげな雰囲気を作り上げながら、ラストでネタ晴らしをする。

本短編の印象が強いので、全体的にユーモラスな印象が強い。死者が見る夢というイメージからかけ離れた流れなので、タイトルの印象とのギャップにより面白さを増大させているのだろう。

その他の短編は、なぜかタイトルに「猫」がついた短編が多い。そして、「ねこしずめ」に関しては、密室が内容として登場してくる。物理的な密室というよりは、部屋の外に雪が積もり、足跡がないので不可能殺人だという流れのパターンで、家の外に生きた猫がぎっしりと足の踏み場もなく敷き詰められている。

この描写を読んだ時、思わず頭の中にその景色を想像してしまった。ぎっしりと敷き詰められた生きた猫。猫は動くものだと思うのだが、猫同士が身動きできないほどすし詰めとなる。衝撃的な状況だろう。

恐ろしさや気持ち悪さよりも、面白さが勝つ雰囲気だ。



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