マスカレード・イブ 東野圭吾


 2015.5.31      お客様の秘密を守るホテルマン 【マスカレード・イブ】

                     
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■ヒトコト感想

前作「マスカレード・ホテル」の前日譚となる連作短編集。新人刑事の新田とホテルマンの尚美が出会う前、それぞれが活躍する短編が描かれている。新田については相当キャラ立ちしており、新人ながらも独自の考えで事件を解決しようという優秀さがうかがえる。尚美にしても、ホテルマンのノウハウを学びながら、お客様の秘密をどのようにして守っていくかの苦労が描かれている。

例え警察の捜査だとしてもむやみに客の情報を提供することはない。それぞれの短編ごとにホテルに滞在する人物が登場するのだが、それぞれがそれぞれの秘密を持ってホテルへやってくる。そんな客の仮面にきづいたとしても、気にしないそぶりをするのがホテルマンで、犯人逮捕へ繋げるのが刑事の役目だ。

■ストーリー

ホテル・コルテシア大阪で働く山岸尚美は、ある客たちの仮面に気づく。一方、東京で発生した殺人事件の捜査に当たる新田浩介は、一人の男に目をつけた。事件の夜、男は大阪にいたと主張するが、なぜかホテル名を言わない。殺人の疑いをかけられてでも守りたい秘密とは何なのか。お客さまの仮面を守り抜くのが彼女の仕事なら、犯人の仮面を暴くのが彼の職務。二人が出会う前の、それぞれの物語。「マスカレード」シリーズ第2弾。

■感想
「それぞれの仮面」は、ホテルに宿泊する客の裏の素顔に気づいていても、気づかないふりをすべきホテルマンの使命が描かれている。尚美は、偶然元カレと出会う。客としてやってきた元カレはスポーツタレントのマネージャーをしていたのだが…。

元カレの不倫相手が自殺未遂をすることからはじまる本作。タレントのマネージャーの苦労と、ホテルという不倫密会には適した場所が事件を誘発する。自殺未遂を起こした女はどこにいったのか。ホテルマンだからこそ知りえる、人間のあさましい姿だ。

「仮面と仮面」は、覆面作家の創作活動をうまく逆手にとった作品だ。タチバナサクラという作家の熱烈なファンたちが、サクラを一目見ようと同じホテルに泊まる。そこでフロント係り尚美は、サクラを守ろうと様々な策略をねるのだが…。

熱烈なファンたちがあらゆる手段を考え作家に近づこうとするのが面白い。もしかしたら、作者は追われる側としての実体験でもあるのだろうか。ホテルで缶詰め状態で仕事をする作家と会うためにはどうすればよいのか。そして、作家の衝撃的な正体が…。2度、大きな驚きがある。

「マスカレード・イヴ」は、ホテルコルテシア大阪で巻き起こる奇妙な殺人事件だ。助っ人でホテルへやってきた尚美が、事件を解決へ導く情報を得る。新田は新人女性刑事と共に事件を解決しようとするのだが、有力な容疑者は、事件当日は大阪のホテルにいたという。

アリバイ崩しと、交換殺人が融合したような作品だ。尚美はひとりの客の匂いを敏感に感じ取り、それがどれだけ昔のことであっても覚えている。ホテルマンというのは、記憶力も大事な要素なのだと思い知らされる作品だ。

ホテルにまつわる様々な状況、特に客の仮面については興味深く読むことができた。



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