マスカレード・ホテル  


 2012.6.5   新参者風な新シリーズ 【マスカレード・ホテル】

                      評価:3
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■ヒトコト感想

新キャラクター誕生か。頭は切れるが上司に反発しがちな若手刑事と、みすぼらしい身なりの所轄の刑事。二人のコンビが事件を解決するというシリーズが、本作からスタートするのだろうか…。キャラクター的には確かに面白い。所轄の刑事が、実は隠れた名刑事という流れで、若手刑事が学び成長していく。本作は連続殺人事件の最後の舞台がホテルとなり、そこでホテルマンとして若手刑事の新田が潜入し、様々なホテルのエピソードと絡めながら、事件を解決するというストーリーだ。どことなく「新参者」に近い。メインの事件にサブのエピソードが絡み、最後に犯人が判明する。ホテル内部でまき起こる事件は興味深く、新鮮だが、メインの事件のトリックが思ったほど強烈ではないので、全体的にあっさりとした印象だ。

■ストーリー

待望の新ヒーロー誕生! 極上の長編ミステリ 都内で起きた不可解な連続殺人事件。次の犯行現場は、超一流ホテル・コルテシア東京らしい。殺人を阻止するため、警察は潜入捜査を開始し・・・。1行たりとも読み飛ばせない、東野ミステリの最高峰。

■感想
連続殺人事件の次の犯行場所が判明し、そこで潜入捜査をする新田。連続殺人事件の仕組みは確かに面白い。謎の数字の羅列から、次の事件の犯行場所を割り出す。ただ、その目的と、黒幕の怪しさとういのは、物語が進むにつれて、だんだんと薄れていく。メインの連続殺人事件とは別に、新田がホテルマンとして潜入捜査中に、様々な出来事が起きる。これが、「新参者」でいうところの、個別のエピソードと同じだ。ホテルならでわのトラブルや事件というのは、一般人では知りえないことなので、非常に興味深い。次にホテルに泊まる機会があれば、なにげなくホテルマンを気にしてしまいそうだ。

複数のエピソードと平行するように、事件の真相が少しづつ明らかとなる。その過程で、怪しい人物が何人も登場しては消えを繰り返し、物語として小さな盛り上がりをいくつも作っている。読者は、このエピソードが事件とどのように関係してくるのかを予測し、楽しむことができるだろう。新田の事件に対する熱い思いや、自分の手柄としたいという若者独特の上昇志向。それと対比するように、コンビを組む所轄の刑事が、独特な味をだしている。うだつの上がらない見た目からは想像できないほど、きめ細かな捜査と推理を披露し、新田を圧倒する。この二人のキャラクターは、今後、別の事件でもコンビを組むのだろう。

新シリーズのスタートだとしたら、ちょっとインパクトが弱いかもしれない。メインの事件は得体の知れない恐ろしさはあるが、ふたを開けてみると、なんだか肩透かしを食らったような感じだ。ホテル内部でのエピソードも関係しており、前半の伏線がラストに繋がるのは見事としかいいようがない。作者の読みやすい文章と、ホテルという異質な空間での出来事というのは、ミステリーとして申し分ない。ただ、事前の期待値を超えることはなかった。

新しいシリーズとして、キャラクターの個性づけには十分成功している。




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