2017.7.2 持ち主を魔物に変えるイコン 【魔物 上】
魔物(上) [ 大沢在昌 ]
評価:3
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■ヒトコト感想
麻薬Gメンの大塚が主人公の本作。ロシアから麻薬取引にやってきた謎の怪物が暴れまわる。何発銃弾を撃ち込んでもびくともせず、一滴の血も流さない男。男が手にするイコンに何かしらの秘密があるという流れとなっている。イコンにとりつくカシアンという魔物が、持ち主を魔物に変える。この流れがファンタジーのまま続くのか、それとも新たな薬物により人を魔物に変えるというストーリーになるのかわからない。
上巻では、カシアンにとりつかれた男が死に、その後、別の男にとりついたことで終わっている。カシアンに殺された刑事や麻薬Gメンの仇をとるために奔走する大塚。正体不明のままイコンの伝説を信じてカシアン討伐へと向かっている。
■ストーリー
北海道の麻薬取締官・大塚に、ロシアと地元やくざとの麻薬取引の情報が入る。現場を押さえるため万全の態勢で臨む大塚。だが、ブツは押収したものの、麻薬の運び屋であるロシア人を取り逃がしてしまう。ロシア人は、銃撃による重傷を負いながらも、警官数名を素手で殺害し、町へ消えてしまった。
あり得ない現実に、新種の薬物を摂取している可能性が考えられたが、犯人は逃走する際に一枚の絵を大事に抱えていたという。この絵は一体何なのか?大塚はロシア人ホステス・ジャンナの力を借り、それがロシアの教会で百年にわたり封印されていたイコンであることを知る…。
■感想
ロシアの海峡に封印され続けたイコン。イコンにとりつくカシアンという魔物。その魔物にとりつかれた男は魔物のようになる。何発銃弾を撃ちこんだとして決して流血することはなく、死ぬこともない。頭を撃ったとしても倒れない。
そんな怪物が麻薬Gメンである大塚の目の前に現れ、素手で同僚の首を砕く。イコンがカギとなりカシアンは様々な悪人にとりつくことができる。人が魔物のようになるのはカシアンのせいなのか、それとも新種の薬物なのか。現段階では何が正解なのかわからない。
薬物を取り締まるために張り込んでいた大塚。それがカシアンにとりつかれた悪魔のようなロシア人に翻弄されてしまう。のちにカシアンの存在を知り、非科学的な流れとなっていく。カシアンが悪人にとりつき、悪人から別の悪人にとりついていく。
カシアンにとりつかれた兆候としては、目をつむったようにまつ毛が長くなる。頭の中で想像すると恐ろしい。目をつむったまつ毛の長い男が、人を素手で殺していく。人間を持ち上げ、天井に頭を突き刺し首を折って殺す。とんでもない殺戮方法だ。
カシアンがとりつくイコンと、カシアンにとりつかれた男を探す大塚。その過程では、麻薬Gメンが所属する厚生労働省と警察との駆け引きがある。そこにカシアンにとりつかれたと思わしきヤクザの組長が絡んでくる。カシアンの真相が明らかになるのは下巻だろう。
人から人へ乗り移るカシアンをどのようにして倒すのか。悪人でなければとりつけないことと、イコンに帰ることができるのが倒すポイントなのだろう。下巻ではカシアンにとりつかれた男と、大塚たちの壮絶な戦いがあるに違いない。
非科学的なカシアンの存在をそのまま描くのか、科学的結末をつけるのか、どちらになるのだろうか。
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