ローカル線で行こう!  


 2017.2.27      猛烈にやる気がわいてくる 【ローカル線で行こう!】

                     
評価:3
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■ヒトコト感想
廃線もくぜんのローカル線を建て直そうとする熱い物語。池井戸潤真山仁のような企業再生的な物語ではない。新社長が元新幹線のカリスマ・アテンダントということで、企画とイベントで客を集め、赤字を減らそうという流れだ。そのため、ロジック的な経営手法はなく、どこか勢いでうまくいっているような雰囲気すらある。

ただ、リストラ、効率化、費用削減などで経営を再建するよりも、気持ちは盛り上がる。新社長である亜佐美の勢いにのせられ、周りもついていき、いつの間にかすべてがうまくいく。どこか学園祭のような一体感がある。後半では、ローカル線を廃線に追い込もうとする勢力や、たて続けに起きる事故についての調査など、ミステリアスな流れもある。

■ストーリー
「お金がないなら、知恵を出すのよ!」赤字ローカル線の再生を託されたのは、地元出身の新幹線カリスマ・アテンダント篠宮亜佐美、31歳。沿線住民やファンを巻きこむ企画をくり出し、体あたりで頑張る姿に社内も活気づく。しかし不穏な事件が相次いで亜佐美たちは頭をかかえることに。逆転の手はあるのか?

■感想
序盤の勢いはすばらしい。赤字に悩むローカル線を生き返らせるために、新社長である亜佐美がとった行動は非常にわかりやすい。社内の雰囲気を明るくすること。そして、サービス業としてのレベルを上げ、イベントを増やし集客を増やすこと。

単純なようだが、テキパキと決断し決定するその勢いがすばらしい。さらには、周りを巻き込む力もすごい。亜佐美が先頭に立って休日返上でひたすら24時間仕事のことを考え続ける。亜佐美に感化されるように、県庁から出向してきた副社長までもがローカル線復活に力を注ぐ。

経営再建策は、まるで学園祭のようなのりでイベントを立て続けに実施することにある。ひとつのイベントに対しても細かいこだわりがあり、自らが客寄せパンダとなる亜佐美。なんでも利用し、なおかつ結果を出してしまうそのバイタリティは、読んでいて元気がでてくる。

池井戸潤の作品を読むと感じる、倍返し的なすっきり感とは違う、ひとつのことに邁進することのすばらしさを感じることができる。ご都合主義的なパターンもあるが、勢いのすばらしさは読む者のページをめくる手を止められない。

物語の後半では、ローカル線を廃線に追い込もうとする勢力の実体が明らかとなる。ただでさえ赤字のローカル線に、自然災害での事故や不具合が発生すれば、それだけで経営に致命的な打撃を与えることになる。

犯人探しのミステリーとしては多少強引なような気もするが、ちょっとした恋愛模様も絡めるなどして、強烈なインパクトを表現している。仕事にやりがいを見出せない人や、なんとなくやる気が湧かない人は、本作を読んでみると良いかもしれない。思わぬ力を貰えることだろう。

亜佐美の周りを巻き込む力はすばらしい。



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