仇敵 池井戸潤


 2015.2.11      庶務行員が不正を暴く 【仇敵】

                     
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■ヒトコト感想

元エリート銀行員でありながら、いわれなき罪で辞職させられた恋窪。地方銀行の庶務行員となりながら、きな臭い銀行幹部の不正を暴き出す。「オレたちバブル入行組」に近いが、主人公の恋窪には、半沢ほどの魅力はない。敵対する相手も、半沢は上司たちだったのに比べ、恋窪はヤクザや他行の取締役だ。

元エリート行員らしく粉飾決算を見抜く力や、不正に金を借りようとする者たちに対する危機管理がすばらしい。駐車場整理をする庶務行員が、企業の不正を暴き、メガバンクの取締役や経済ヤクザが作り上げたシステムをつぶそうとする。庶務行員という立場と、不正に立ち向かう恋窪の雰囲気の違いに違和感があるが、後半になるとそれにも慣れてしまう。

■ストーリー

幹部行員の裏金工作を追及した恋窪商太郎は、謂れなき罪を着せられメガバンクを辞職。エリートから地方銀行の庶務行員となるが、人生の豊かさを知る。だが、元ライバルからの電話が再び運命を揺るがす―。不正を知った男は謎の死を迎え、恋窪は“仇敵”への復讐を誓う。

■感想
庶務行員の恋窪が不正を暴く。まず庶務行員という存在を知らなかった。銀行に行くと案内をしてくれるおじさんがいるが、その立場なのだろう。商品企画や融資にたずさわる行員とは待遇は段違いに悪いが、定時に帰れる安定した仕事のようだ。

エリート行員から、あえて閑職である庶務行員へ転職する。忙しい仕事から暇な仕事への移動は、やりがいは減るが、日々人間らしい仕事ができる。恋窪の選択は悪くないように思えてくる。ただ、恋窪の隠れた執念というのを感じる場面は多々ある。

恋窪は前職で罪をきせられ退職に追いやられている。そのことをいつまでも恨み続けるのは半沢直樹に近い。執念というか、相手に復讐するという強烈な気持ちを感じることができる。経済小説らしく、小さな会社が資金繰りに苦労し、不正をはたらく下りや、どうにかして銀行から金を借りようとする経営者の状況などがシンプルに描かれている。

企業経営のむずかしさと、経営者の孤独がこれでもかと描かれており、銀行の融資担当者の苦労も描かれている。金を扱う仕事というのは、かなりのストレスだと想像できる流れだ。

強烈なインパクトがあるのは、不正を暴かれまいとして様々な謀略が駆使されるくだりだ。巨大すぎる不正の元凶に、いち庶務行員ごときがどのようにして対決するのか。結局のところ、不正の証拠を見つけ出すところまでがピークだ。あとは警察にまかせるのみ。

半沢ほどのドキドキ感はない。恋窪の能力をひそかに知る者たちが、恋窪を頼るあたりは良い。普段は昼行燈的人物のはずが、実は…。というのは定番かもしれない。人は見かけで判断してはならないということか。

相変わらず経済の勉強になる小説だ。



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