暗闇のアリア 


 2017.12.23      その男を調べた者は自殺してしまう 【暗闇のアリア】

                     
暗闇のアリア [ 真保 裕一 ]
評価:3.5
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■ヒトコト感想
日本で年間3万人近い自殺者がでる。その中での自殺に見せかけた殺人を描く本作。冒頭から夫の自殺に疑いをもつ真佐子が独自の調査に動く。元刑事の井岡も真佐子からの依頼を受け動き出す。前半部分は遺書の偽装が可能かということに焦点があてられている。科学的な調査で、遺書の偽造が可能とわかると、そこから偽装自殺の疑いへ加速していく。

強烈なのは、真佐子の夫の自殺を調べると、ある男の周辺で次々と自殺が起こっていることがわかる部分だ。その男を調べようとした人物は、次々と自殺をしている。謎の人物である梶尾はアフリカで死んでいる。この梶尾の存在がミステリアス感に拍車をかけ、どのように相手を自殺に追い込んだのかは最後まで描かれることはない。それが逆に強烈に興味を惹かれる要素となっている。

■ストーリー
夫は自殺ではない、殺されたのだ。警察から連絡を受けて、富川真佐子は呆然となる。自殺の状況は完璧にそろっていた。でも、絶対に違う。夫は死を選べるような人ではない。この自殺の背後には、きっと何かある―。真相を探る孤独な闘いが始まった。警察庁では、真佐子から相談を受けた元刑事の井岡が、内密に過去の事件を調査していく。

次々と明らかになる不可解な自殺…。もし、自殺大国と言われる日本で、多くの「偽装された死」があるとしたら?ついに二人は謎の鍵を握る男の存在にたどりつく。が、彼はすでに異国の地で死んでいた!?闇にうごめく暗殺者は、なぜ生まれたのか?国際的スケールで展開する極上エンターテインメント!

■感想
ひとりの官僚の自殺に疑問をもった官僚の妻が動き出す。元刑事の井岡が科学的な調査で遺書の偽造が可能だと結論づける。その結果、世間に大量に発生している自殺の中で、どれだけ自殺に見せかけた殺人が行われているかを調べ始める。

官僚の妻である真佐子のアグレッシブさはすさまじい。警察が情報を開示しなくとも、同じ情報にまでたどりついてしまう。民間人でありながら週刊誌記者の職歴をいかし調査を続ける。そして、くしくも警察と同じようにあるひとりの人物にたどりつくことになる。

謎の人物である梶尾。幼少期から不幸な境遇であったが、ある時から、梶尾の周辺で自殺が多発することに。官僚の自殺も、不倫相手の夫の自殺を調べる家庭で梶尾に行きつき、その結果、官僚は自殺することになる。梶尾の周辺を調査する人物が次々と自殺していく。

それは暴力団でも同様だ。このあたり、梶尾のミステリアス感がすさまじい。まるで梶尾がゴルゴ13並みの殺し屋のようなイメージがある。暴力団が都合よく利用していた存在ではあるが、その素性を調査しようとすると瞬く間に自殺として処理されてしまう。

結局、梶尾がどのようにして相手を自殺にまで追い込むかは描かれていない。そして、梶尾が捕まることもない。皆、梶尾はアフリカの地では死んでおらず、活動は続いていると気づいていながら、捕まえることができない。

警察上層部は、偽装自殺を見破れなかったことを公にしたくないために、梶尾を追いかけようとはしない。梶尾の尻尾をつかみそうになると、自殺させられてしまう。これほど恐ろしい存在はない。そして、ラストでもその梶尾の活動は弱まることを知らないと暗示するような終わり方をしている。

梶尾の存在が強烈なインパクトがある。



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