暗い越流 


 2017.12.4      読了後どっと疲れる短編集 【暗い越流】

                     
暗い越流 [ 若竹七海 ]
評価:3
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■ヒトコト感想
葉村晶シリーズの短編や、奇妙で恐ろしい短編もある。切り口が若竹七海らしい短編集だ。「酔狂」は、一人の男がひたすら何かを語っている。その語る内容から、どこかに立てこもっているということや、幼いころに虐待を受け貧困の状態にあったということがわかる。読み応えはあるのだが、気分はあまりよくない。

読了後どっと疲れるような作品だ。葉村晶シリーズの短編の方がまだラストに救いがある。葉村が悪い要素をすべて吸い取っているような感じかもしれない。その他にも2つの短編で、南治彦という編集者が登場するのだが、何か意味ありげだが特にない。新シリーズかとも思ったが、そこまでキャラ立ちしていない。謎だ。

■ストーリー
悪な死刑囚に届いたファンレター。差出人は何者かを調べ始めた「私」だが、その女性は五年前に失踪していた!(表題作)女探偵の葉村晶は、母親の遺骨を運んでほしいという奇妙な依頼を受ける。悪い予感は当たり…。(「蝿男」)先の読めない展開と思いがけない結末―短編ミステリの精華を味わえる全五編を収録。

■感想
「蠅男」は葉村晶が廃墟から骨壺を回収する依頼をうけるが、蠅男に襲われて地下室に閉じ込められる物語だ。骨壺回収というヘンテコな仕事であり、何か裏があるのは間違いない。オカルト的な流れを想定させながら、現実的な答えとする。

さらには憎たらしいほどの女性が登場するのも葉村晶シリーズの定番だろう。兄妹での金が絡んだ骨肉の争い。肉親と言えども金が絡むとどのように変貌するのかわからない。この強烈な流れが葉村晶シリーズだろう。

「狂酔」は、最初はただの男のひとり語りがひたすら描かれているだけかと思いきや、その語りから状況が明らかとなる。どこかの施設に立てこもり人質に対して語りかける男。淡々と語る内容が尋常ではないため非常に恐ろしくなる。

貧困や虐待など男には同情すべき過去がある。にしても目的がはっきりしないまま、ひたすら自分の過去を語る男というのは恐ろしい。男の語りを聞かされる人質たちは、まさに生きた心地がしないだろう。読後感は良くはない。

「幸せの家」は、行方不明になった敏腕編集長を探すため関係しそうなナチュラル生活の読者たちへ聞き込みに向かう。なんとなく葉村晶っぽい主人公だが、内容はかなり違う。さらには、本作では南治彦という編集者が登場する。

何か意味ありげな発言をし、物語を解決に導くタイプの人物かと思いきや…。特別キャラ立ちしているわけではないが、他の短編にも登場してきたため、印象に残っている。新シリーズのスタートの前ふりかもしれない。

葉村晶シリーズは相変わらず強烈なインパクトがある。



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