2016.8.30 世界の中の日本がわかる 【国家の攻防/興亡】
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■ヒトコト感想
作者が分析する世界情勢。時事のニュースを読み解き、そこから日本はどうなっていくかが描かれている。メインはやはりロシアと日本の関係だ。安倍総理の言動がロシア側にどのように受け取られているのか。どのようなシグナルを送り、相手はどう受け止めているのか。本作を読むと外交が非常に神経を使う交渉だということがよくわかる。
ロシアが近隣諸国と問題を起こした際に、日本はどのような態度にでるべきか、だとか。北方領土問題についての進展など、作者の得意分野であるだけに鋭い分析がされている。驚いたのは外交官の仕事を離れてから随分たつ作者だが、未だにロシアから直接情報が入ってくるということだ。
■ストーリー
ロシア、ウクライナ、シリア、「イスラム国」…。「世界の火薬庫」から考える!!会員制情報誌『エルネオス』での、約9年に及ぶ連載を厳選した本書は、現代の危機・反知性主義との闘いの記録ともなっている。インテリジェンスで読み解く最新の世界史。
■感想
作者が日本と主にロシアとの関係を分析する。2007年くらいから連載されたものをまとめた作品である。そのため、当時の状況をリアルに分析した記述が多い。ロシア内部での権力争いや、日本とロシアの北方領土交渉の進展具合など、非常に細かい部分にまで言及している。
特に印象的なのは、ひとつの報道やニュースから状況を読み取る部分だ。ロシアの国営放送でこのようなニュースが流れたということは、こういったシグナルが発せられている。深読みしすぎでは?と思う部分もある。
安倍総理の発言で、ロシアとの北方領土問題は後退した、と世間から思われていたとしても、ロシア側がどう分析しているかを作者は分析している。それによると、たとえロシアを非難するような声明を日本が出したとしても、それを出す順番により印象は大きく変わるらしい。
日本はアメリカと同盟関係にあるので、アメリカに追従するのはロシアも納得しているようだ。そんな制限がある中で、最大限ロシアに気を使っていることがロシアには伝わっているらしい。非常に些細なことだが、このあたりが外交には重要なのだろう。
本作を読むと、外交はなんて神経を使う作業なのだと思えてくる。ひとつの報道、ひとつの発言から国家間の関係が大きく変わっていく。自国の利益を第一に考えながらも、相手の立場を尊重しなければならない。当然、違う文化を持つ国同士なので、思うことは様々だろう。
相手の国の文化を知り、どう受け止められるかまでを想定して日々発言しなければならない。北方領土返還など永遠に無理なのでは?と素人は思ってしまうが、作者や日本の政治家たちはそうは思っていないらしい。
最新の世界(主にロシア)と日本の外交関係が良くわかる作品だ。
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