孤独の価値 森博嗣


 2015.3.23      孤独を恐れるな 【孤独の価値】

                     
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■ヒトコト感想

孤独について作者の思いが語られている。基本的に作者は一般的に言うところのオタクなのだろう。人に会わずにひたすら自分の好きなことだけをやることが何より楽しい。そんな作者が語る孤独は、一部説得力があるが、一般人に浸透させるのは辛いような気がした。メディアが人との繋がりがすばらしいものと煽り立て、孤独は辛いことだと断言するせいで、孤独を苦にした自殺者が存在すると考えるようだ。

メディアの恋愛至上主義で、恋愛しないのはダメだ的な流れは過去にあり、現在はそれも下火となり、恋愛しない人生はそれほど悲観的ではないと思われてきている。孤独もこのパターンになるのか。作者の主張はかなり過激だが、今現在、孤独で悩んでいる人には良いだろう。

■ストーリー

人は、なぜ孤独を怖れるのか。多くは孤独が寂しいからだと言う。だが、寂しさはどんな嫌なことを貴方にもたらすだろう。それはマスコミがつくったステレオタイプの虚構の寂しさを、悪だと思わされているだけではないのか。

現代人は“絆”を売り物にする商売にのせられ過剰に他者とつながりたがって“絆の肥満”状態だ。孤独とは、他者からの無視でも社会の拒絶でもない。社会と共生しながら、自分の思い描いた「自由」を生きることである。人間を苛む得体の知れない孤独感を、少しでも和らげるための画期的な人生論。

■感想
孤独とは、ひとりで価値あることに没頭できるので、なによりも素晴らしいことだと作者は語る。作者は孤独はそれほど辛いことではないという説明の前に、なぜ人が孤独を恐れるのかについて語っている。人類の本能まで紐解き、詳しく説明されるので非常にわかりやすい。

そして、資本主義社会として、孤独を多くの人が好むようになると物が売れなくなるので、メディアは繋がりや絆が重要だとアピールするらしい。確かにメディアによって無理やりつくられた状況はあるかもしれないが、それをあっさりと受け入れるのは、人間の本能が繋がりを求めているからだろう。

作者は人や社会とのつながりを軽視しているわけではない。重要だが、それがないから死ぬのはおかしいと言う。現在では社会と繋がっていなくとも、生存はできる。通販やネットが発達し、引きこもりが普通に存在しているのがその証拠なのだろう。

そのため、作者は孤独を推奨している。と言っても、無理やり孤独になれと言っているのではなく、孤独を受け入れ、厭ならばそこから脱出する思考をめぐらすことが重要だと言っている。また、孤独な人をさげすむのも間違っていると言う。

過激な言葉もあり、説得力もある。特に、人はのぼり調子にあるときが一番幸せを感じる、という部分は非常に納得できた。頂点よりも今から昇っていくという感覚が重要なようだ。同じく、最底辺よりも、今から落ちていくという感覚が人をどん底にさせるらしい。

近未来を予測し人の感情を変化させるというのは非常に納得できた。自分の気持ちの上下も確かに近未来を想像してのことが多い。それらの説明が、図式され論理的に語られている。非常に理系的だが、この説明の仕方は自分に合っているようで、非常にすんなりと理解できた。

今現在孤独の人はもちろん、孤独でない人も孤独の意味を知る上では参考になる作品だ。



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