北村薫のミステリびっくり箱 北村薫


 2016.1.14      古典ミステリー好きならばどうぞ 【北村薫のミステリびっくり箱】

                     
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■ヒトコト感想

作者が様々なジャンルのゲストを招き、そのジャンルに精通している作家と共に対談を行う。基本的に作者は古典ミステリーが大好きだ。どのパターンでも、必ず江戸川乱歩がでてくるあたり、かなり筋金入りかもしれない。対談のジャンルは「将棋」から始まり「女探偵」や「忍者」、「映画」、「落語」など様々。

興味のあるジャンルであれば楽しめるだろう。ただ、どれもがかなり昔の話題を持ち出しているので、作中で登場する内容に、若い人はついていけないかもしれない。自分もそのジャンルは好きだが、あまりに古すぎてまったく理解できない部分もあった。「映画」などは大好物のはずだが、本作で紹介する作品は、なにひとつ見たことも聞いたこともない作品ばかりだった。

■ストーリー

ミステリを語らせたら当代一の作家・北村薫が語るまた語る!!―ミステリの帝王・江戸川乱歩が探偵作家クラブの会報にのこした足跡を追いつつ、各ジャンルの一線級ゲスト&人気ミステリ作家を迎えてお贈りするスペシャル対談集。お題は「落語」「将棋」「女探偵」等々、多彩な話題の中で浮かび上がるのはミステリの快楽と、大乱歩の知られざる素顔。幻の文士劇台本とインタヴューも収録された超豪華版文庫。

■感想
「将棋」は、ミステリ作家と将棋の繋がりや、江戸川乱歩の将棋の腕前などが対談で語られている。プロ棋士を交えた対談では、将棋の指し方でその人の性格がわかるなど、非常に興味深い対談となっている。ただ、将棋好きでなければ楽しめないかもしれない。

過去のミステリ作家たちが、真剣に将棋で勝負する。ミステリーと将棋がどのように繋がっていくのか。その道のプロからすると、ミステリー作家が指す将棋というのは、決定的なチャンスを逃すなど、穴だらけなのだろう。将棋好きならば楽しめるかもしれない。

「映画」や「女探偵」などは内容的には興味深かった。特に「女探偵」については、ミステリーと探偵は切っても切れない関係なので、実際の探偵の仕事とのギャップが面白かった。探偵は推理してはならない。ただ、調査したことをありのまま依頼者に報告するのが仕事らしい。

だとすると、小説に登場する名探偵は、明らかに異質な存在ということだ。ミステリーを扱った「映画」についても語られているのだが、いかんせん、作品が古すぎてまったく共感できなかった。ただ、同じタイトルでも監督によって犯人が変わるというのは面白かった。

「落語」は、作者が好きなジャンルだけあって力の入れ方が違う。が、自分がほとんど落語について無知なので、読んでいて楽しめなかった。ジャンルとしての落語や、落語の作法は興味深い。ミステリー小説と落語の一番大きな違いは、観客がすべてを知った状態で、何も知らない落語中の人物が最後に真相を知ることで面白さを生み出していることだ。

落語でミステリーを実現するのはかなり困難なことなのだろう。強烈なインパクトはなく、落語にそれなりに精通していないと楽しめないことは間違いない。

古典ミステリー好きならば楽しめるだろう。



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