キルショット


 2015.5.9      無表情のミッキー・ロークは恐ろしい 【キルショット】

                     


■ヒトコト感想

殺し屋とチンピラの物語。冷静沈着で凄腕の殺し屋のアーマンド。まずその風貌がネイティブアメリカンということで特殊だ。過去に仕事で弟を見殺しにした負い目があり、弟に似たリッチ―の面倒をみることになる。このリッチ―がとんでもないクズだ。アーマンドのようにポリシーのある殺し屋ではない。見境なく殺し、自分の欲望に素直すぎて口が悪い。

正体を知られたアーマンドたちは、別居中の夫婦を殺そうと画策する。アーマンドが最初は優しくリッチ―を見守っていたのだが、次第にリッチ―のことが手におえなくなる描写が秀逸だ。殺しの美学も何もないリッチ―は、ただただ不快でしかない。アーマンドのポリシーある行動が、せめてもの救いかもしれない。

■ストーリー

冷静沈着な殺し屋アーマンド(ミッキー・ローク)とアメリカ全州で銀行を襲うことが念願のリッチー(ジョセフ・ゴードン=レヴィット)は、ある不動産屋から金を脅し取る計画を立てている。その不動産屋に勤務するカーメン(ダイアン・レイン)は、鉄骨工の夫ウェイン(トーマス・ジェーン)とオフィスにいる時に、恐喝しに来たアーマンドたちと鉢合わせになるがウェインがこれを追い払う。顔を見られたアーマンドたちは夫妻を殺す機会を毎日窺う。

■感想
ネイティブアメリカン役のアーマンドをミッキー・ロークが演じる。相変わらずのガタイの良さと特殊な風貌。ネイティブアメリカン役がぴったりはまるとは思わなかった。相棒のリッチ―は、これまたイメージとは真逆のジョセフ・ゴードン=レヴィットが演じている。

500日のサマー」のような優男の印象しかないのだが、本作では様変わりしている。細い体で無理やりチンピラ風に暴れていると思いきや、後半ではリッチ―のクズっぷりが物語にメリハリをつけている。特に長年暮らしてきた女を、軽い感じで殺す描写は衝撃的だ。

本作ではアーマンドたちの狙う別居夫婦がもう一つのポイントだが、正直どうでも良いのかもしれない。別居中に証人保護プログラムにより身分を偽り一緒に暮らすなんて流れは、どこかで見たような…。お決まりのようにお互いが夫婦を演じながら、新たな場所で生活しようと奮闘する。

そこにどこまでも追いかけ続けるアーマンドたちの魔の手が迫る。アーマンドの徹底した情報管理はすさまじい。リッチ―のようなチンピラは、適当にただ相手を殺しているだけ。このバランスが良いのだろう。

リッチ―のクズっぷりは、物語がすすむにつれて強烈になる。リッチ―の傍若無人な行動に、アーマンドがいつ切れるのかと気になりながら見てしまう。リッチ―のことを死んだ弟のようにやさしく見つめるアーマンド。優しい微笑みだが、目が笑っていないのが恐ろしい。

そして、ラストではなんの前ふりもなく突然衝撃的な場面が登場する。アーマンドとリッチ―の未来は容易に想像できた。物語として、正当な流れなのだろうが、リッチ―のラストはあまりにあっさりしすぎている。

アーマンドの無表情は恐ろしくなる。



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