火天風神 若竹七海


 2015.9.25      火事と台風どちらが危険? 【火天風神】

                     
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■ヒトコト感想

孤立したリゾートマンションに激しい台風が直撃する。作者が得意とするコージーミステリーだ。今回は、三浦半島のリゾートマンションで事件は起こる。そこに集うのは、従弟を無理やり押し付けられた海外帰りの男や、夫が浮気し怒りで家出した主婦、耳が聞こえないが独り立ちしたいと考える少女や、浮気相手に無理やり連れてこられた男や、学生グループなど多種多様だ。

そんな中に浮気を調査する探偵と、リゾートマンションを管理するいけすかない管理人など、癖のある人物が入りこみひともんちゃくある。ユーモアの要素はなく、終始シリアスだ。身元不明の死体発見から始まり、監禁騒ぎや火事まで、目移りするほど盛りだくさんな事件が起こる。

■ストーリー

最大瞬間風速88メートル、未だかつて日本が経験したことのない大型台風が三浦半島を直撃した。電話も電気も不通、陸路も遮断され、孤立したリゾートマンション。猛る風と迸る雨は、心に台風の眼のごとき空白を抱える滞在客を見境なく襲う。立て続けに訪れる極限の恐怖。そして炎までも、彼らを舐め尽くすべく身じろぎを始めた―

■感想
三浦半島のリゾートマンションに集まる人々。そこは高級リゾートマンションなので、様々な理由を持った人々が、ひと時リフレッシュするために訪れる。必ずしもリゾートとしてやってくる者ばかりではない。夫に浮気された妻が、家出先として使うだとか、独り立ちしたい耳の聞こえない女性が、純粋に訓練のためにやってきたり。

果ては浮気調査のため、リゾートマンションに宿泊する浮気カップルを追いかける探偵だったり。それらが入り混じり、正体不明の死体発見から火事が発生し、さらには台風まで。かなりイベント盛りだくさんだ。

ひとつのきっかけから事態は大きく動き出す。ポイントは間違いなく管理人だろう。世間に怒りの気持ちを持ち続ける男が、リゾートマンションに来る客たちへ怒りの視線を投げかける。ひとつのきっかけから自暴自棄となり客を襲いだす。

それとは別に学生グループが台風のさなかに行方不明になり、果てはマンション内で火事が発生し、行方不明者や台風により孤立する者まででる始末。だれがどのような状態で、今どうなっているのか。頭の中を整理しないと混乱する可能性がある

マンションの外は最大級の台風に直撃され、マンションの中は火事で煙が充満している。この状態で人はどのような選択をするのか。物語として危機的状況におちいった人物がどのような手段にでるか、その立場によって大きく変わることも描かれている。

連続殺人事件なのか、それとも不慮の事故なのか。多数の行方不明者と、複雑な人間関係により物語は先行きが見えなくなる。登場人物の中でユーモア担当者がいないため、常に緊迫感あふれる物語となっている。

火事と台風、どちらが危険かは非常に微妙だ。



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