火車 HELPLESS


 2016.3.23      婚約者は何者なのか 【火車 HELPLESS】

                     
火車 HELPLESS [ イ・ソンギュン ]

■ヒトコト感想
原作の面白さを十分に表現できている作品だ。突如失踪した婚約者を探すムンホ。婚約者のソニョンが実は名前や指紋まですべて別人だと知る。自分が心底信頼した人物に嘘をつかれていたショックと、得体の知れない恐怖がある。ソニョンは本当は何者なのか。借金地獄から抜け出せない恐怖と、人を人と証明するために何が必要なのかがよくわかる作品だ。

人とのつながりさえなくしてしまえば、誰かのふりをするなんてことは簡単なのだろう。ソニョンの正体を解明するまでの過程がすばらしくミステリアスだ。まず、ソニョンの学生時代の顔が異なり、本物のソニョンと偽者の接点が…。人の入れ替わりがこうも簡単にできるとは思わないが、ミステリアスな流れがすばらしい。

■ストーリー

結婚一か月前、両親宅へ挨拶へ行く途中、サービスエリアに寄ったムンホ(イ・ソンギュン)とソニョン(キム・ミニ)。コーヒーを買いに行ったムンホを待っていたものは、ドアが開いたままの車だけだ。繋がらない携帯電話、痕跡もなく彼女が消えた。

彼女を探すために前職が強力班刑事で親戚の兄ジョングン(チョ・ソンハ)の力を借りるムンホ。しかし、家族も友人もいない彼女のすべては嘘だ。失踪当日、銀行口座から残金をすべて引き出し、住んでいた家の指紋までも消していたソニョンの行動に単純な失踪事件ではないことを悟るジョングンは、彼女が殺人事件と関わりがあることを知る…。

■感想
結婚一ヶ月前に、婚約者が実は名前も生まれもわからない人物だったと知れたら人はどうなるのだろうか。サービスエリアで突如失踪したソニョン。婚約者であるムンホは、親戚の兄ジョングンの助けを得ながらソニョンの正体を暴こうとする。

まず、じわじわとソニョンがまったくの別人だとわかるくだりがすばらしい。ソニョンの故郷には古い友達がおり、そこで学生時代のソニョンの写真を見る。そこには、今のソニョンとはまったくの別人の顔がある。そこからムンホの、婚約者は何者なのか?の探索が始まる。

調査する過程で、偽ソニョンが殺人事件に関わりがあることを知り、偽ソニョンの過去を探るうちに昔の不幸な生い立ちを知る。偽ソニョンにも同情すべき部分はある。が、自分が入れ替わるために巧妙にターゲットを探し出し、そこから鮮やかに入れ替わる手並みはすばらしすぎる。

普通に考えれば、血縁者がすべて死んだとしても、何かしらその本人につながる人物は存在するはずだが、すべてを欺き、ソニョンとして生活し、婚約者まで見つけてしまう執念はすごすぎる。

なぜ?どうして?という疑問は付きまとったまま物語はすすんでいく。そして、ソニョンと同じように新たなターゲットを決めた女は…。原作のスリリングな流れを引き継いでいるため、序盤でのソニョンの正体不明感はすばらしい。ソニョンとは何者なのか。

今までのソニョンは別人なんてことがありえるのか。現代社会のゆがみというか、一度借金地獄におちいると、そこから逃げ出せないことの恐怖もある。さらには、人がたやすく入れ替わりが可能な現実も恐ろしい。よく考えれば、その人物が誰かなんてことは、公的な証明などなんの確証でもないのだろう。

今目の前にいる人の過去まですべてを知っている自信はない。



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