エベレスト 神々の山嶺


 2017.8.31      8千メートル級の山の恐怖 【エベレスト 神々の山嶺】

                     
エヴェレスト 神々の山嶺 DVD通常版 [ 岡田准一 ]
評価:2.5

■ヒトコト感想
原作は非常に印象深く、雪山へ挑む男たちの過酷さやすさまじさを感じることができた。本作もそのあたりに重点を置いて映像化されているのだが…。やはり長大な原作を映像化するにはかなりのエピソードをはしょる必要があるのだろう。羽生がアチコチ骨折した状態で、歯を使いながら必死で生還した場面は、ちょっとしたエピソードで終わっている。

本来なら、そこがメインでもおかしくはないはずだが…。登山の実力はすさまじいが、性格に難があり、日の目をみない登山家・羽生。そんな羽生の登山を写真におさめようとする深町の物語だ。8千メートル級の山の恐怖や過酷さはそれなりに表現されてはいるが、やはり原作の濃密な描写には勝てない。原作の良さはあまり出ていないと思えた。

■ストーリー
ネパール・カトマンドゥで“山岳史上最大の謎"を秘める古いカメラを発見した山岳カメラマンの深町は、孤高の天才クライマー、羽生(はぶ)に偶然出会う。彼の過去を調べるうち、その凄絶な生き様にのみ込まれていく深町。

そして、羽生に人生を翻弄されながらも、彼を愛し続ける女性・涼子と出会う……。男たちは自然の脅威の前に命をさらしながらも、人類の限界を超えて、ただひたすら “世界最高峰"の頂きを目指す。彼らは生きて帰る事が出来るのか?その先には果たして、何があるのか――。

■感想
原作では、羽生のすさまじい登山描写が強烈な印象として残っている。8千メートル級の山に登ると、ただ立っているだけで死に近づいていく。脳細胞が少しづつ死んでいく世界。非常に苛酷な状況をどのようにして映像化するのか。吹雪の中で、必死な形相で雪山を登り続ける男たち。

俳優たちの顔芸で辛さを表現している。確かにすさまじさは伝わってくるのだが、息苦しさを感じるような雰囲気ではない。世界最高峰を目指す偏屈な男たち。なぜこれほど危険で辛く過酷なことに挑戦するのかと男のロマン?が感じられるかもしれない。

羽生のキャラクターは、ひたすら山にだけ心血を注ぎ他のことはどうでもよいキャラとして描かれている。それでも羽生を慕ってくる者にはきちんと対応し、当然ながら人を助けたりもする。この羽生のキャラクターは好感がもてる。

パートナーが滑落しザイルにぶら下がった状態となり、このままだと二人とも助からないと分かった時、ザイルを切ることができるか。羽生はあっさりと「切る」と言うが、実際には切っていない。登山は一歩間違えれば死の危険が間近にあるものだと良くわかる流れだ。

原作は上下巻に分かれた長大な作品だ。羽生を慕う若者の存在や事故、そして、羽生を愛し続ける女の話や深町との絡みなど濃密に描かれていた。羽生の山に登ることを何よりも優先するための生活スタイルや、実直なまでに誰もが登ったことのない道を選ぶ理由など、映像化の上で削減されている部分がある。

原作では、羽生が滑落しても歯で登り続けたエピソードについて、強烈な内面描写が描かれていたが、映画版ではサラリと流されている。しょうがないことだとは思うが、濃密なエピソードがカットされるのは辛い

原作を読んでいなければ、十分楽しめただろう。



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