かくカク遊ブ、書く遊ぶ 大沢在昌


 2015.7.18      少年時代の驚愕な読書量 【かくカク遊ブ、書く遊ぶ】

                     
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■ヒトコト感想

エッセイ集だが、とりわけ作者が作家になるまでのエッセイが非常に興味深い。少年時代に本を読むことの楽しさに目覚め、一日に何冊も本を読む。父親が子供に対する接し方がわからないからと与えられた本。なんだか特殊な家庭環境にように思えるが、非常に教育には熱心な家庭のように感じた。進学校に進みそこで本の世界にはまり込みドロップアウトする。にもかかわらず早稲田に合格してしまう。

なかなか、遊びほうけて合格するような学校ではない。作者の家庭自体に知識レベルの高さを感じずにはいられない。いつもどおり、ゴルフと釣りに関するエッセイもあるが、このあたりは相変わらずというか、特別な印象はない。どのような経緯で作家になったのかが非常に興味深いエッセイ集だ。

■ストーリー

子供の頃から読書が好きで、作家、それもハードボイルド作家になりたいと思っていた。しかし大学に入ると遊びに明け暮れ、ついには「除籍通知」が届いた。大学卒業後の将来も、ガールフレンドも失い、空っぽとなってしまった。唯一、残されていたのは、小説家への夢だけだった。

「人生の長いまわり道」と言われながらも投稿し続けた。そして父が死んだ一ヶ月後、新人賞受賞の知らせが来た―。デビュー後十年間「永久初版作家」と言われ続けながら、直木賞を受賞し、人気小説家と呼ばれるようになった現在までを綴った。小説を書く、そして遊ぶ、大沢在昌・まるごと一冊。

■感想
売れっ子作家が、デビューして数年間は永久初版作家とよばれていたことに驚いた。そして、父親には死ぬまで作家になることを反対され続けたこともすさまじい。作者の少年時代の過ごし方から始まり、売れっ子作家となるまでがエッセイとして描かれている。

まず最初に驚くのは、少年時代のすさまじい読書量だ。あるジャンルを読みつくしてしまったから別のジャンルにうつる。それを楽しみとして少年がひたすら本を読み続ける。膨大な読書量が作者を小説家として成功させたように思えてしまう。

大学生になり遊びほうける作者。そこで新聞社の役員である父親からダメ出しをくらう。子供が小説家になりたい、なんてことを言いだして賛成する親も少ないだろう。ただ、作者の父親のように、かたくなに否定し続けるのもすごい。

父親がガンで死ぬ直前であったとしても夢を諦めることができない作者。ひとこと「作家を目指すのを辞めた」と言えば、安心するはずが、それもしない。このあたり、作者の強烈な信念を感じずにはいられないエッセイだ。

売れてからの作者の遊びの定番としてゴルフと釣りがある。それぞれにかなりのこだわりがあり、どんなに仕事が忙しくとも、徹夜続きでフラフラであっても遊ぶことをやめない。ある意味異常とすら思える状況でありながら、ものすごいバイタリティを感じるのは確かだ。

銀座で飲む売れっ子作家の典型のような作者だが、遊びに対するこだわりというのを感じずにはいられない。本作のエッセイの中では、遊びよりも作家になるまでの方がインパクトはあるが、遊びの部分は、間違いなく欠かせない要素なのだろう。

作者のファンならば読んでおくべきエッセイ集だ。



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