χの悲劇 森博嗣


 2016.10.15      シリーズの時代の流れを感じる 【χの悲劇】

                     

森博嗣おすすめランキング
■ヒトコト感想
シリーズの時系列がはっきりとする作品だ。真賀田四季の助手をつとめていた島田文子が主人公の本作。ラストにあっと驚くような展開がまっている。Gシリーズだということを忘れないように、ちゃんと海月が登場するあたり、驚かせえるポイントが適格だ。ただの奇妙な殺人事件のはずが、そこから真賀田四季に認められた島田の能力が語られる。

ハッキングの描写が近未来的というか、追いかける追いかけないという描写がスリリングで良い。どこまで未来の話しかわからないまま物語はすすんでいく。そして、いつまでも真賀田四季の影響力からは逃れることができない。ラストの結末を読むことで、作中の奇妙な記述の意味が分かってくるのも良い。

■ストーリー
あの夏、真賀田研究所でプログラマとして働いていた島田文子は、いくつかの職を経て、香港を拠点とする会社に籍を置いていた。人工知能に関するエキシビションの初日、島田は遠田長通という男に以前、愛知で起きた飛行機事故に関する質問をされる。トラムという動く密室で起きる殺人。その背後に感じられる陰謀。静かだった島田の生活が、その日を機に大きく動き始める。Gシリーズの転換点。

■感想
真賀田四季の研究所でプログラマとして働いていた島田文子が主人公の本作。プログラマとしての能力が見込まれ政府の機関からハッキングを依頼される。その前段として、文子に近づく人物が殺されたりもする。

そもそも電車内で近くにいた人物が突然死亡するという事件の謎がメインであるのだが、それよりも真賀田四季や文子のハッキングの能力ばかりが印象に残っている。まるで迷宮を彷徨うように、ネット上の秘密情報を探ろうとする。次々とサーバを乗り換えることで痕跡を消す。近未来的だが現代にも通じる部分だ。

トラムという列車のような乗り物内で起きる殺人。文子はその殺人の謎を解こうとする。ここで怪しげな組織や真賀田四季との関わりについて語られることになる。そして、文子は追われると、当然逃亡することになる。このあたりで文子に対する描写について不可解な部分がでてくる。

長い階段を登る描写で、必要以上に疲れたり。プログラミングの能力も昔に比べて落ちたという記述もある。普通に考えれば若い時と中年の差ぐらいにしか思わなかったのだが…。ラストで衝撃の事実が明らかとなる。

静かだった文子の生活も終わりを迎える。真賀田四季は肉体が滅びようとも生き残るといった描写がある。そして、末期がんの文子もまた、真賀田四季に誘われ同じ道を歩むのか…。どのような仕組みで肉体以外が生き残るかの記述はない。

ただ、あの天才・真賀田四季ならばなんらかの仕組みにより脳だけを活かすシステムを作り上げたのだろう。あっさりと文子が死に、その間際には海月が登場してくる。ある意味海月の登場はオマケなのかもしれない。

文子が登場したことに、強烈な懐かしさを感じた。



おしらせ

感想は下記メールアドレスへ
(*を@に変換)
pakusaou*yahoo.co.jp