影絵の騎士  


 2017.5.7      テレビ業界が日本を牛耳る世界 【影絵の騎士】

                     
影絵の騎士 [ 大沢在昌 ]
評価:2.5
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■ヒトコト感想
ネットワークというテレビ組織に牛耳られた近未来の日本。私立探偵のヨヨギ・ケンがネットワークを通じた殺人予告事件の謎を調査する。近未来の日本ということで描かれているが、今現在の日本と比べるとかなり違和感がある。テレビ業界が日本を牛耳り、映画は独自の発展を遂げ、人工島で撮影が行われる。ネットの影響でテレビ業界が衰退している現在と比べると違和感がある。

映画関連に関しては、すべてをCGで描くというのは近いかもしれない。それにしても俳優の服すらもCGで描くのは強烈だ。様々な利権や組織間の軋轢。アイランド(人工島)の主や、ひとり孤高の存在であるケンがすべてを掻き回す。事件としては特別なものではないが、複雑な組織関係が本作のメインかもしれない。

■ストーリー
この国が行き着く姿とは…。スラム化した東側と西側とに二極化した東京。ネットワークというテレビ組織に多くの産業が吸収されてしまう一方、映画産業は東京湾の人工島で独自の発展を遂げる。折しも、ネットワークを通じた連続予告殺人に、番組は高視聴率を獲得。私立探偵ヨヨギ・ケンが事件の真相に迫るべく、人工島へと潜りこむ!日本の近未来図を壮大なスケールで描くエンタテインメント大作。

■感想
日本の近未来の姿としては若干違和感がある。ネットワークという名でテレビ業界が日本を支配している世界。そして何よりレーティング(視聴率)を稼ぐことが重要視される。となると、ネットワークではどのようにしてスクープを得るかが重要となる。

その行きつく先は、ネットワークによる事件の自作自演である。世間で話題の殺人事件は、実はネットワークの息がかかった者が実行していた。それを調査するのがヨヨギ・ケンだ。孤高の私立探偵が、特殊な業界の内部に入り込み組織を掻き回していく。

映画撮影専門のアイランドに入り込み、事件の真相を調査するケン。そこで様々な組織の対立に巻き込まれていく。組織のベースがチェチェン人やロシア人などと様々な人種が入り込み、複雑な組織関係でバランスが保たれている。

映画関連の天才が崇められアイランドを牛耳る世界。ケンはよそ者として、それらの慣習を打ち砕くように思うがままに動き回る。ハードボイルド全開の物語だ。ケンが特殊な出自であり、一匹狼として動き回る様が爽快感をうんでいる。

視聴率至上主義が犯罪行為まで手を染めるようになる。全てを牛耳る存在がまるで帝王のようにふるまう。そして、鍵を握る女の存在。定番的キャラクターたちのハードボイルド作品だ。ただ、舞台となる日本の状況が特殊であり、アイランドという閉鎖された状況での出来事というのが大きいのだろう。

原警やSSなど、国を守るべき存在と当然ならが反発するケン。それでいて、帝王から気に入られたりもする。ひとりの力が特殊な既得権益を崩壊させる物語だ。

長大な物語なので、物語に入り込めれば楽しめるだろう。



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