獣眼 


 2017.12.24      未来を予見できる神眼の後継者は 【獣眼】

                     
獣眼 (徳間文庫) [ 大沢在昌 ]
評価:3
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■ヒトコト感想
凄腕のボディーガードのキリの物語。依頼は17歳の少女さやかを一週間守ること。期間限定のボディーガードの理由はさやかに未来を予知する力である「神眼」が芽生えるまでらしい。神眼は継承制であり、同時に複数の神眼が現れることはない。さやかの父親が一週間以内に死ぬことを父親自身が予見しているため、さやかを守ることになるキリ。

神眼についての物語というよりは、神眼にまつわる様々な状況を描く物語だ。神眼の能力が物語上で大きな力をはっきする場面はない。ロシアマフィアや神眼を利用しようとする宗教組織、さらにはバチカンまでも巻き込み、次に誰に神眼が開くかが注目されている。そんな状態でさやかを守ることの困難さが描かれている。

■ストーリー
素性不明の腕利きボディガード・キリのもとに仕事の依頼が舞い込んだ。対象は森野さやかという十七歳の少女。ミッションは、昼夜を問わず一週間、彼女を完全警護すること。さやかには人の過去を見抜き、未来を予知する特別な能力が開花する可能性があるという。「神眼」と呼ばれるその驚異的な能力の継承者は、何者かに命を狙われていた。そしてさやかの父・河田俊也が銃殺された―。

■感想
キリのプロフェッショナルなボディーガード対応が強烈に印象に残っている。無用な争いを好まず、さやかを守ることだけを考える。さやかが危険な場所へ向かうのをいさめ、降りかかる火の粉は払いのける。車の運転係りである大仏と共にキリはひたすらプロフェッショナルを貫く。

ハードボイルド作品の定番として、キリは次々と女に言い寄られはするが、さやかを守ることを第一に考える。最終的にはさやかにまで興味をもたれてしまう。この根拠のないモテ具合は、ハードボイルドの典型といってよいだろう。

神眼の能力はさておき、誰に神眼が開くかがポイントだ。さやかの父親が自らの死を予見し、その後さやかに神眼が開くことが予想される。神眼の能力を利用しようとする組織が、それぞれに動き出す。さやかを殺そうとする組織や、さやかを取り込もうとする組織。

ただ、さやかに神眼が開く形跡がないことから、物語は複雑化していく。ひとつの神眼が消滅した場合は、必ず誰かに新たな神眼が開くはず。神眼の存在自体を否定するバチカンなどの組織により、神眼が闇に葬られるのか…。

キリにとっては神眼などどうでもよい。たださやかを守ることに集中するが、どうしても神眼を切り離すことができない。さやかの身内に神眼が開いたのか。母親が住むマンションが火事となり母親が行方不明となる。並行して殺し屋がさやかか、もうひとりの人物を殺そうと動き出す。

どちらかを始末すれば良いという謎の依頼。キリは神眼が開く法則に翻弄されることになる。キリの能力のすごさは、後半ではあまり披露されない。神眼がどのようにして継承されていくのかが本作のポイントなのだろう。

結局、神眼の能力はほとんど表現されないまま終わっている。



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