ジャングルの儀式 大沢在昌


 2015.8.6      定番的ハードボイルド 【ジャングルの儀式】

                     
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■ヒトコト感想

典型的なハードボイルド作品。ハワイからやってきた傀。父親の仇である花木を殺すためだけに今までの人生をすごしてきた男。ひとりの男が巨大組織を率いる男へ迫る。ハードボイルドの定番として、一匹狼というのがある。傀がたったひとりで花木を襲撃し、そこで父親が殺されたいきさつを聞く。物語はここから真の敵を倒す物語へと変化していく。

傀が肉体的にすぐれ、武器を手に入れ、そして、敵を討ち倒す。お決まり通り、謎の美女麻美と親密になる。ラストの敵との戦いは、傀とわずかな仲間だけで、敵のアジトへと攻め入ることになる。激しい戦いの描写は、まさにこれぞハードボイルドという感じだ。安心できるハードボイルド作品だ。

■ストーリー

桐生傀。25、6歳、長身。逞ましい身体と強い意志を持つ男。父を殺した男・花木達治を求めて、ハワイから真冬の東京へやってきた。17年間、その為にだけ身体を痛め、心を飢えさせてきたのだ。都会のジャングル東京でその幕が開いた―。謎の男達の襲撃。傀の破乱の戦場へと導く妖艶な美女麻美。そしてついに傀は目指す相手、花木と対決するが…。

■感想
都会のジャングルという表現がどうかはわからないが、ハワイからやってきた傀は、父親の仇を討つために東京へやってきた。ハワイからきた逞しい肉体を持った若者が、裏の世界へ入り込み、父親の仇討へ心血を注ぐ。

それまでの人生の大半を、仇討へ向けた男の執念が描かれている。花木という裏の組織と通じていると思わしき男を見つけ出すと、そこで父親が殺された理由を知ることになる。そこから、傀が真に倒すべき相手が判明する。東京を舞台にした激しい戦いが繰り広げられる。

真の敵の存在が、傀を新たな道へと進ませる。真の敵の存在があまりに巨大すぎるために、傀たちは真の敵の居場所を見つけ出すことができない。となると、かすかに繋がりがある人物を見つけ出し、その人物を拷問してでも真の敵を見つけ出そうとする。

強烈な執念で敵を追い詰めようとする。そして、仲間たちと協力し、敵の追撃をかわしながら敵のアジトへと入り込もうとする。ハードボイルドとして、仲間と共に適地へと乗り込むのは定番だろう。その過程で仲間が死んでいくのもまた定番的だ。

過去の事件が明らかになるにつれ、物語の全容も見えてくる。そして、真の敵が何を一番恐れているのかが、物語のポイントとなる。北海道の人里離れた場所に要塞を作り上げ、襲撃に対して万全の準備を整えている。

死地へと飛び込む形になる傀たちは、目的を達成するため、死をも恐れずに突き進む。激しい殺し合い、そして巨大組織の権力。主人公の傀がハワイ出身ということにどれだけ意味があるのか不明だが、激しい戦いの描写には思わず引き込まれてしまう。

定番的なハードボイルドが好きな人にはおすすめの作品だ。



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