2017.5.13 ITの魔の手が迫る 【IT 第3巻】
It 3 /スティ-ヴン・キング/スティ−ヴン・キング、小尾芙佐
評価:3.5
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■ヒトコト感想
ITとの対決前に、子供時代の7人がどのような経験をしてきたかが語られている。IT絡みの出来事だけでなく、7人の絆が深まったエピソードなども語られている。はみだしクラブを結成した7人。ヘンリーという典型的な暴力いじめっ子と対立することで強固な繋がりができる。少年少女たちが、ITとの戦いをどのようにして経験してきたのか。
ちょっとした冒険物語的ではあるが、悲惨な結末を迎えるパターンもある。スティーヴン・キングの「スタンド・バイ・ミー」のような前向きな明るさというより、ITとの壮絶な対立が、常に近くに死が存在した状態での戦いとなっている。小学生程度の子供たちが争うには、かなり強烈な状況となっていたのは確かだ。
■ストーリー
精神病院のベッドで、男がむっくり身を起こし、月からの邪悪な声に耳を傾ける。町に戻った〈はみだしクラブ〉の面々を迎えたのは、チャイニーズ・レストランの怪、夜の図書館に出現したピエロ、などだった。いまデリーでは、あらゆる狂気が目をさました。それに対抗するには、みんなの記憶を繋ぎあわせ、ひとつの力とすることだ。
■感想
大人となり、それぞれ成功したが、またITのいる町に戻ってきたはみだしクラブの面々。そこで子供時代の経験を回想する。7人がどのようにして強い絆を作り上げたのか。そこには様々な理由があった。ITとは関係ない、ヘンリーという暴れ者によって攻撃されるはみだしクラブ。
そこでの激しい戦いは、とても小学生とは思えない展開だ。さらには、ヘンリーの仲間がITの犠牲者となる。メインのストーリーとは関係ないが、登場人物を深く掘り下げているので、キャラクターに強烈な深みがでてくる。
ITは見る者の恐怖によってその姿かたちを変える。ただ、名前としてはペニーワイズという固有名詞が登場してくる。次巻では大人になったはみだしクラブの面々とITの対決が繰り広げられるのだろう。そこに向かうまでの準備段階が本作だ。
さらには、夫から逃げ出したぺヴァリーの元に、暴力的な夫の魔の手が迫っている。本作の登場人物たちには、何かしら心に傷を持ち、そのトラウマとの戦いもある。子供時代の出来事が濃密に描かれており、そのことが、大人になってのITとの対決に大きな影響を及ぼすのは明確だ。
6人の少年とひとりの少女によって構成されたはみだしクラブ。少年少女たちの淡い恋心も描かれている。結局のところ、そのころの恋心は大人になって成就することはない。
親が過保護で、喘息でもないのに喘息だと子供に刷り込み、効果のない薬をだしつづける医者や、精神的に異常をきたした子供が、幼い自分の弟を殺すなど、非常にショッキングなエピソードが続く。それらはITによる影響ではなく、そのキャラクターを説明するためだけに描かれたものだ。
次巻ではとうとうITとの対決が始まる。
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