2017.10.21 人の心理を分析したミステリー 【いまさら翼といわれても】
いまさら翼といわれても[ 米澤 穂信 ]
評価:3
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■ヒトコト感想
「氷菓」シリーズ。省エネをもっとうとする折木の周りの出来事を描いている。折木が省エネ対応になったきっかけや、細かい部分にまで話をしないために、他者から誤解をうけやすい折木のエピソードなどが語られている。
かっこよいのが、折木が語らないのは話をすることで誰かに迷惑がかかるという思いがあるからだ。そうならば、自分ひとりが悪者になっておけばよいという考え方だ。まさに名を告げることなく立ち去る的なヒーローだ。その他、摩耶花のマンガの話や、千反田が大事な合唱祭でいなくなった理由など、心の奥底にある謎が解ける爽快感がある。衝撃的なミステリーではないが、人の心理を分析したミステリーだ。
■ストーリー
神山市が主催する合唱祭の本番前、ソロパートを任されている千反田えるが行方不明になってしまった。夏休み前のえるの様子、伊原摩耶花と福部里志の調査と証言、課題曲、ある人物がついた嘘―折木奉太郎が導き出し、ひとりで向かったえるの居場所は。そして、彼女の真意とは?(表題作)。奉太郎、える、里志、摩耶花―“古典部”4人の過去と未来が明らかになる、瑞々しくもビターな全6篇!
■感想
「鏡には映らない」は、まさに折木のかっこよさをアピールしたような作品だ。中学の卒業制作で折木が担当した部分は明らかに手抜きであった。そのことで周りに恨まれた折木だったのだが…。めんどくさいからと手抜きをし、周りから恨まれたという流れなのだが、そこには別の真実があった。
他者から憎まれることよりも、あるひとりの人間の気持ちを考え、悪者になる折木。数年後にその真実をつきとめるあたりもすばらしい。折木のキャラクターが一本芯の通ったカッコいいキャラだという印象が定着したエピソードだ。
「連峰は晴れているか」は、学校でよくある日常を細かく推理していく物語だ。教師が「ヘリが好きなんだ」と言って外を見る。その発言に違和感を覚えた折木は調査することに…。何気ないひとことから、発言の真意を見つけ出す。
そこまでする必要があるのか?という思いもある。ただ、今までそんな発言をしたことがない教師の唐突な言葉が印象に残ったのだろう。ヘリを気にすることにどのような意味があるのか。教師が登山家だったことを知り、衝撃的な真実に突き当たる。
表題作でもある「いまさら翼といわれても」は、千反田が大事な合唱祭でソロパートを歌うはずであったが、会場に現れない。千反田を探すことになった折木。千反田が向かいそうな場所を探す折木だが、根本にあるのは、なぜ千反田が会場に現れないかだ。
この流れというのが最後までミステリアスだ。タイトルは千反田の言葉になるのだろう。ただ、なぜ千反田がそうなったかというのが、そこまで語られてはいない。ミステリアスな終わり方であるのは間違いない。
キャラクターの個性が際立っている。
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