デボラ、眠っているのか?  


 2017.3.27      コンピュータが自分で自分のソフトを書き換える 【デボラ、眠っているのか?】

                     
デボラ、眠っているのか? Deborah, Are You Sleeping? [ 森 博嗣 ]
評価:3
森博嗣おすすめランキング
■ヒトコト感想
シリーズ第4作目。今回はウォーカロンや人間が記憶を補助するために頭に埋め込んだチップに、ネットワークを通じてソフトウェアが入り込み、制御される話だ。遺跡のように過去から起動し続けてきたスーパーコンピュータが発見された。バッテリーを交換したことで起動し、何かしら計算を始める。現代よりはるか未来の話なのだが、こうなるだろうと想像できるのが恐ろしい。

スーパーコンピュータは自律的にソフトを書き換え学習し進化していく。何の目的かはわからない。恐らく真賀田四季が大きく関わっていることは間違いないだろう。ネットワーク越しにウォーカロンが制御されてしまうというのも、ソフトがまるでウィルスのようにネットワークを通して感染していくようで恐ろしい。

■ストーリー
祈りの場。フランス西海岸にある古い修道院で生殖可能な一族とスーパ・コンピュータが発見された。施設構造は、ナクチュのものと相似。ヴォッシュ博士は調査に参加し、ハギリを呼び寄せる。一方、ナクチュの頭脳が再起動。失われていたネットワークの再構築が開始され、新たにトランスファの存在が明らかになる。拡大と縮小が織りなす無限。知性が挑発する閃きの物語。

■感想
フランスの奥地でスーパーコンピュータと、それを守る一族の存在が明らかとなる。電源さえ確保されていれば、何かしら動き続けるコンピュータ。過去から現在にいたるまでネットワークで全ての情報を収集し、進化し続けるコンピュータ。

非常に恐ろしいというか、近未来で同じようなことが起こりそうで恐ろしい。コンピュータが自分で自分のソフトを書き換え進化していく。となると、人間がソフトのコードを書くよりも、早く正確にコードが書けるのだろう。そうなると、人間が太刀打ちできないコンピュータとなってしまう。

ハギリたちはスーパーコンピュータを停止させようとする。このまま動かし続ければ、悪い方向へすすむと言う別のコンピュータの判断による行動だ。このあたり、全ての判断をコンピュータに任せた結果、何が正しくて何が間違っているのか非常にあいまいになる。

ハギリたち人間の価値は、発想できることにあるらしい。人間が勝つかコンピュータが勝つか。コンピュータはネットワークを通してソフトウェアをウォーカロンに組込み制御してしまう。それも100分の1秒単位でサーバに問い合わせをして銃を撃つ瞬間に制御する。とんでもなく高度な世界だ。

ネットワーク越しに頭の中のチップに入り込むソフトウェアのデボラ。デボラが入ることで別のソフトウェアの制御から逃れることができる。本体はクラウド上に存在し、ソフトが分割する形で他者へと入り込む。ただしそれぞれは自立しているが、同じソフト同士はネットワークを通じて連絡をとりあうことができる。

こうなると、ネットワークが通じる場所にいるウォーカロンは全て敵とみなすしかない。非常に恐ろしい世界であることは間違いない。頭の中にコンピュータが入り込む世界では、制御を乗っとられることもありえるのだろう。

恐ろしい近未来を予言しているような作品だ。



おしらせ

感想は下記メールアドレスへ
(*を@に変換)
*yahoo.co.jp