イデアの影 森博嗣


 2016.4.2      幻想の中に迷い込む女 【イデアの影】

                     
イデアの影 [ 森博嗣 ]
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■ヒトコト感想
幻想小説というくくりであり、主人公である女性のバックグラウンドが描かれていない。そのため、想像するしかない。何不自由なく育った箱入り娘が、歳の離れた夫との生活の中で、様々な出来事に遭遇し、そして現実の世界なのか、夢の世界なのかわからない奇妙な出来事を経験する。

主人公は俗世間の汚れた世界とは無縁と思われるようなピュアな女性をイメージして物語を読みすすめた。が、そのイメージを覆すように、新たに出会う男たちと恋をし、惹かれていく。そこに不倫だという背徳感はあるとしても、不倫のドロドロとしたイメージはない。彼女が見る夢にはどのような暗示が含まれているのか。何かオチを期待するべきような物語ではない。

■ストーリー

彼女は病院にいる。館を離れ、あの家政婦から逃れ。彼女は思う。彼女が愛した男たちを――理知的でリリカル。美しく繊細な「幻想小説」。

■感想
世間知らずで箱入り娘のお嬢様が、年齢の離れた男と結婚し、日々なんの不自由のない生活をくりかえす。お手伝いさんがおり、専業主婦であり、子供がいない。子供がいないことを少しだけ気にするそぶりを見せるが、そこに特別な意味はない。

物語として、夫に多少DVの気があるにせよ、ごく普通の恵まれた生活をする家庭というイメージだ。旦那が彼女のために英語の家庭教師をつけたりと、恵まれすぎている状況はある。彼女自身は、そこで家庭教師に惹かれ、夢の中でみだらな行為を連想させるような流れとなる。

夢か幻なのか。彼女が経験する出来事には、現実と夢の境目がないようだ。受験のために居候することになった男に恋心をいだく彼女。そして、ある夜に結ばれたあと…。彼女は果たして精神的に病んでいるのか、それとも正常な心の持ち主なのだろうか。

病院に入院してからの彼女の夢は、明らかに何かを暗示しているのだが、それを読み解くことができない。物語としても、誰が死んで誰が生きているのかよくわからない。これが幻想小説なのだろうか。物語の流れとは別の、特殊な世界を感じることができる。

彼女の行く末がどうなるのか。そして、旦那との関係は。作者の作品にしてはめずらしい題材かと思ったが、ラストの流れの不思議さはいかにも作者らしい。主人公の彼女が、世間ずれしていないことが、幻想感を高めているのは間違いない。

負い目に感じることがあり、それが夢に登場することはある。ただ、夢に囚われる人は少ないだろう。病院内での奇妙な出来事の数々は、彼女の夢なのか、それとも現実なのか。結局最後までその答えが明かされることはない。

この流れは、好きな人にはたまらないだろう。



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