2015.4.7 想像よりも健康的な作家生活 【陽のあたるオヤジ】
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■ヒトコト感想
大沢在昌のエッセイ。週刊プレイボーイに連載されたエッセイのようだが、特に決まったテーマがあるわけではない。そのため、作者の思いが様々な形で描かれている。一番驚いたのは、二十年前の作品だが、作者が35歳という描写があったことだ。最初、エッセイを読んでいるとオヤジと連呼しているので、40歳は越えているのだろうと思ったのだが…。
20代前半に作家としてデビューし、六本木を遊び歩いた作者にとっては、30をこえると、その時点でオヤジなのだろう。作者の小説に対するスタンスや、普段はどのようなことをしているのか。仕事場の話や、酒や女の話。そして趣味の話など、作者のファンであれば、小説作品からはうかがい知れない作者のプライベートな部分を知ることができる作品だ。
■ストーリー
オヤジとなったら、選ぶ道はひとつしかない。「オヤジくさい」オヤジではなく「陽のあたる」オヤジになるしかない。堅い決意を胸に抱いた著者が、自分の青春時代をふりかえりながら、酒、仕事、恋愛、釣り…について、どのように積極的に立ち向かうか、を語るエッセイ。
■感想
オヤジとなった作者が、「陽のあたる」オヤジになるためのエッセイ。イメージとしては、作者は若いころから作家として成功し、六本木を遊び歩いているイメージがあった。遊びはそうだが、実はそこまで売れっ子だったというわけではないらしい。
常に初版しか売れない作家。直木賞をとったのもデビューしてから十年以上経ってから。あまり作家としての苦労を感じさせないが、実は苦労していたのだろう。本作では忙しさについてのグチは多い。売れっ子作家の宿命かもしれないが、直木賞受賞時の喜びと共に、死ぬほどの忙しさは作品から伝わってきた。
女や酒について描かれている。ハードボイルド小説作家そのままに、酒と女遊びには激しい。ただ、イメージ先行型というのはあるのだろう。結婚し、子供が生まれると、家族や仲間と旅行し、そこで朝と夜の食事を作り、ジョギングをしたり釣りをしたりゴルフをしたりと、作家にしては健康的なバカンスを過ごしているようだ。
青春時代の作者のイメージは、まさにハードボイルドを地で行くような感じなのだが、そこからのふり幅が大きいので、よりギャップを感じるのかもしれない。そして、そんな一面が読める本作は貴重かもしれない。
作者のエッセイに登場する他の大物作家たちには驚いてしまう。北方謙三や宮部みゆきが同期というのも驚いた。20代前半でデビューし、今もなお一線で活躍する作者。本エッセイが描かれた時期は20年ほど前なので、トータル40年近くは作家として活躍していることになる。
本作のエッセイからは、作家としての苦悩や、作品を生み出すことについての苦しみはあまり描かれていない。24時間作家として頭を使っている記述はあったのだが、なんとなく印象としては、作品を生み出すことについて、それほど苦労していないのだと勝手に思ってしまった。
作者のファンならば読むべきだろう。
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