ハリウッド・サーティフィケイト 島田荘司


 2016.11.9      これこそキワモノミステリーだ 【ハリウッド・サーティフィケイト】

                     

島田荘司おすすめランキング
■ヒトコト感想
長大な物語。御手洗潔シリーズに登場してきた女優のレオナが主人公の本作。ハリウッドで起こった奇妙な殺人事件をレオナが調査する。有名女優のパトリシアが子宮と背骨の一部を抜き取られて殺されていた。親友のレオナが事件を調査するのだが…。犯人と思わしきイアンという人物目線のパートが物語の不気味さに拍車をかけている。

イアンが立寄った先の医者が、内臓を抜き取られて死んでいた。臓器売買を連想させる流れがありながら、遺伝子操作によるクローン技術や、さらにはタブーとされる人と動物を交配させた怪物を誕生させるなど、後半はとんでもない展開となっている。中盤で何かを暗示するように神話が語られており、不気味さは作者の初期の名作「占星術殺人事件」に近いかもしれない。

■ストーリー
LAPD(ロスアンジェルス市警)重要犯罪課に持ち込まれたヴィデオ・テープ。そこに映っていたのは、ハリウッドの有名女優・パトリシア・クローガーが自邸で何者かに襲われ、惨殺される様だった。しかも、殺害された後、腹をノコギリで切り裂かれ、子宮と背骨の一部が奪い取られていた。ヴィデオの中で犯人が口ずさんだ「P・A・T・T・Y・I・A・N」は何を意味するのか?LAPDは、パティの親友の女優・レオナ・マツザキに連絡を取った。

親友の敵討ちに燃えるレオナは、一人の女優志望の女性と会うことになる。ジョアン・ウィネシュ。なぜか記憶を失っており、何者かによって腎臓と子宮、卵巣を盗まれていた。覚えているのは、イギリスでイアン・マッキンレーという民俗学者と暮らしていたことと、彼が語って聞かせてくれた『ケルトの伝説』だけ。「子宮」にまつわる話が多いその伝説に、レオナは事件との奇妙な符合を感じた。

一方でLAPDに新たなヴィデオ・テープが送られてきた。次の犠牲者はローレン・トランプ。パティやレオナに比べれば、はるかに無名に近い女優だった…。なぜ女優の「子宮」は奪われたのか?現代に甦える「ケルト伝説」の真実とは!ハリウッドを舞台に、奇才が放つ、本格ミステリの大長編1700枚。

■感想
ハリウッドで有名女優が惨殺されるという事件が起こる。親友を殺されたレオナは、事件を調査することになる。そこで、同じような被害を受けたと思われるジョアンと知り合いになるレオナ。ジョアンが語る犯人と思わしきイアンの存在。

子宮と背骨を抜き取るという猟奇的な殺人であり、ジョアンには子宮がないという衝撃的な事実が明らかとなる。この時点で、猟奇殺人を想像せずにはいられない。イアン目線の物語では、善良な医者が内臓を抜き取られて殺されたりもする。何の目的で誰が、謎は深まるばかりだ。

中盤以降では、臓器売買の話がでてくる。が、他人の臓器では拒否反応がでてうまくいかない。そのため、クローンならばということで、クローンの臓器を使うという話になる。が、それも倫理的にどうだという話となる。

子宮が抜き取られクローン技術が登場すると、なんとなく流れは想像できるのだが、作中ではさらに上を行く展開となる。なんと牛と人間をうまいこと配合し、牛の体に人間の内臓をもった生物を作り上げようとしているらしい。そして、それが成功し牛人間ができあがっている。このあたりでとてつもない恐怖感を覚えた。

すべては臓器売買に関わる事件だということが判明してからも謎は残る。それは姿を見せないイアンの存在だ。が、結末はあっと驚くオチがある。ジョアンが記憶をなくしていたこと。子宮が何者かに盗まれていたこと、そして、レオナが何かしら感ずいていること。

ラストではすべての謎がすっきりと解明される。中盤からキメラ生物が登場するまでは、強烈な恐ろしさがある。長大な物語だが、先が気になる展開であることは間違いない。

きわものミステリーであることは間違いない。



おしらせ

感想は下記メールアドレスへ
(*を@に変換)
pakusaou*yahoo.co.jp